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僕をソノ気にさせる
【教師 官能小説】

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僕をソノ気にさせる-11

 杏奈は一礼をして饅頭の乗る皿を優也の前に滑らせて差し出した。話している間に智樹へ鉛筆を握って空中に何かを書く合図をしたから、電話台にあったメモ用紙とボールペンがテーブルの上に置かれていた。
「2分の1ってさ? 最初にお饅頭割ったときみたく、二つに分ける、ってことじゃん? 1を2で割りましたよーって」
 杏奈は紙の隅に『1÷2=1/2』と書いた。「でしょ?」
 念押しすると、優也が頷く。
「ってことは、2分の1割る8分の3っていうのはさぁ……」
 杏奈はメモ用紙の中央に1本横に長い線を引き、上に1/2を、下に3/8を書いた。
「――ってことじゃん? おいおい、横線多いな! っていうのはちょっとガマンね? んで、さっきのヤツですよ。2分の1の分母と分子に2を掛けたら4分の2。でもそれはもともとの2分の1と同じ。だったよね?」
 もう一度優也の方を見ると、再度頷いた。
「ってことは、分数の分母と分子に同じものを掛けても、元の分数と変わりません、ということでしょ? だからこのデカい分数も分母と分子に何掛けちゃっても変わらないんだから、問題ありません、ってことじゃん? ……何掛けよう?」
 杏奈に聞かれて、優也は眉間を寄せていたが、首を小さく振った。
「そうでしょう、そうでしょう。でもね、これって決まってるんだ。これ」
 メモ用紙に書かれた8にぐるぐると丸をした。「こう書いた時に、いっちばーん下に書かれてるこの数字を、分母と分子に掛けちゃえばいいの。分数と整数の掛け算はOKなんだよね?」
「……たぶん」
「じゃ、分母、ね。8分の3掛ける8は……?」
「んと……」優也が手のひらに指で書いて必死に計算しようとしているのを見て、杏奈がボールペンを貸した。「8分の24ってことは……、約分して3」
「よしっ!」
 杏奈は体の横で握り拳を震わせて見せる。「じゃ、1/2掛ける8は?」
「……4」
「おお、暗算。すばらしいっ。……ほら、てな感じでしたら、答えはどうなった?」
「3分の4」
「イエスッ!!」
 杏奈はこぶしを天井に突き上げ、「できたじゃーん。お饅頭食べな、お饅頭。ほれほれ」
 刺し串に挿した扇形の饅頭の欠片を優也の口元に持っていったが、優也はまるでそれが無いもののように、メモ用紙に書かれた過程をもう一回読みなおしていた。
「でもよ」
 見守ってた智樹が言った。「3分の1割る8分の3なら、どうなるんだよ、それ。8掛けたら、分子が3分の8になっちまうぜ?」
「あー……、何か水さす人が居るぅ」
 杏奈は優也からボールペンを受け取ると、左手に刺し串を持ち替えて、新しいメモ用紙にもう一度長い線を引き、下に3/8、上に1/3と書き込んだ。
「えっとですねぇ、あー、そこのお兄さんもちゃんと聞いててください? まず、一番下の数字、8を分子と分母に掛けるのは変わりません」
 もともと書いていた分数をバツで消して、長い線の下に3、上に8/3を書く。
「そして……、じゃ、どうしよう、ここから?」
 そのまま解説を続けるのかと思いきや、杏奈は優也に問いかけた。優也はじっとメモ用紙を見つめて考えたが、なかなか答えが出てこなかった。
「優也くん、これですぜ、これこれ」
 と、杏奈はボールペンを置き、刺し串と饅頭の乗った皿を両手に持って優也の前で揺らした。饅頭の説明は約分だった。分子と分母に同じ数を掛けた数は、元の分数と同じ。
「掛ける? 分子と分母に」
 杏奈は目を見開いた笑顔で、うんうんうん、と小刻みに頷く。
「……3を」
「そしたらそしたら? 分母は?」
「3掛ける3で、……9」
「書いて、書いて!」
 饅頭に両手が塞がる杏奈は、目線でボールペンを優也に促す。
「……上は、んと、……3掛ける3分の8で……、8」
「答えはー?」
「9分の8」
「オッケェィ!!」
 と、杏奈は刺し串を優也の口に持っていき、「ん? ん?」と揺らすと、おずおずと開いた優也の口に饅頭の欠片を入れた。「そこのお兄さんよりも早かったんじゃーん? すごいね、私が言わなくても、3掛けてくれたじゃん。なんで3?」
「3分の8、だから。掛けて分数にならないようにしたかったから……?」
「聞いた? 久我山先輩。分かってました?」
 智樹は、うーん、という顔を見せたあと、
「いやぁ、俺は気づかなかったなぁ」
 と言った。杏奈は饅頭を飲み込んだ優也を肘で小突いて、
「優也くん、あの人のアレ、気ぃ使った演技じゃなくて、マジだと思うよ」
 智樹にも聞こえる声で耳打ちすると、優也が笑った。祖母もそのやり取りを聞いて笑いが漏れ、――涙が流れそうになっていた。優也のあんな朗らかな笑顔を見るのはどれくらいぶりだろう。


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