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黒霧
【ファンタジー 官能小説】

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タナトスの黒霧-2



「お姉さんの意識まだ戻らないのね」
剛志はビールを飲みながら、テレビを見ていた。
洗いものを済ませた静は剛志のビールを取り上げて、ソファの隣に座った。
こくこくと静はビールを飲んだ。
「ちょっ、剛志、んっ……」
剛志は酔っている。あまり酒に強くないのは静も承知で剛志に飲ませている。
酔わせて、帰る気をなくなった剛志を自分の部屋に泊まらせる気だった。
姉が自殺未遂で意識が戻らず、また意識が戻っても警察から違法薬物所持で逮捕されるということを考えると、ひどく落ち込んでいた。
姉の潤子が三日ほど無断欠勤したので、同じ小学校の女教師が部屋に行って、床に倒れている潤子を見つけて救急車と警察を呼んだ。
潤子は左手首を切っていた。
血まみれで倒れている潤子は下着姿だったこともあり何か事件に巻き込まれたものと同僚の女教師は思ったからである。
潤子は古いアパートの六畳一間で暮らしていた。必要最低限のものしか置かれていない、簡素な部屋の畳の上で潤子は意識を失っていた。
警察と医師は潤子が脱法ドラックを吸引した結果、意識を失ったとの見解で一致した。
剛志と知り合ったのは一年前だった。静の働いていたキャバクラに会社の上司に連れられて剛志が来たのである。
剛志に会社の上司は甘かった。剛志の叔父は会社の重役で、剛志は大学を卒業してすぐにコネで入社した新人だとわかっていたからだ。
上司は剛志を連れて得意先をまわり、仕事が終わると飲みに連れて歩いた。
静は剛志に目をつけた。
キャバクラと派遣の日雇いアルバイトと援助交際で暮らしているフリーターが静だった。
キャバクラをいつ辞めてもいいと思っていて、援助交際の方が楽に儲かると思っていた。
静は剛志を落とすために剛志の暮らすマンションのそばに引っ越しさえもした。
興信所に浮気調査ということにして依頼もした。剛志が週に一度、泊まりに行く女がいることがいることがわかった。
剛志と同じ名字の小学校の教員。
静はその学校の体育教師が店に飲みに来たので、援助交際で潤子のことを聞き出した。
剛志の姉だとわかった。探偵は盗聴盗撮までしていたので、近親相姦をしていることを知った。
それでも玉の輿を狙う静には剛志を落とすことしか、もう考えられなくなっていた。
これだけ費用や手回しをして近づいたのだから、あとには引けなくなっていた。
「シャワー浴びてないからぁ、んあっ、剛志っ」
剛志は黙って静のブラウスのボタンを引きちぎるような勢いで乱暴に開くと、ブラジャーをずらして露出した乳房を揉みしだく。
剛志は勃起していて、息づかいが荒くなっていた。食事に一服盛られていたと気づいていないと静は思っている。
剛志は静のスカートをめくり、キスをしながら静の内腿を撫でまわした。静は本当はあまりこうした服装は趣味ではないが、剛志と会う時は潤子の服装を意識して真似をした。コスプレだと静は考えることにした。
剛志の指先が下着の薄い布地の上から、恥丘のわれ目にそって弄りまわしてくる。
姉が入院して一ヶ月、剛志のことなのでオナニーもしていないのかもしれない、と静は思う。
毎週、姉と剛志は体を求めあっていて、潤子が生理のときは潤子が剛志のものをしゃぶって満足するまで奉仕していたのを聞き出している。
潤子は隠し撮りした剛志とのセックスを静から見せつけられて、泣いていた。
剛志に静は告白して、姉が好きでもいいから一度だけ寝てほしいと半ば脅迫するように求めた。
その時、静は隠し撮りをしていたのである。
静は潤子に脱法ハーブの煙を口移して喫煙させた。さらに飲みかけの紅茶に睡眠薬を入れて寝入った間にSM用の首輪や手枷で拘束して、口枷をはめた。
ローターとバイブレーターで思う存分、責め抜いて、それを撮影した。
睡眠薬や脱法ハーブだけでなく、覚醒剤も使って潤子をいたぶった。どんなセックスをしてるか、いつから剛志と肉体関係が始まったのかを静は聞き出して撮影しておいた。
剛志を言いなりにするにはどうすればいいか。潤子を牝奴隷にすれば、剛志は一生、静に逆らえなくなる。
「私は静様の忠実な牝犬です」
カメラに向かって静は潤子に言わせた。
潤子は裕福な家庭に引き取られた養子だった。剛志の父親の愛人の娘で、両親が交通事故で亡くなり剛志の父親が施設から引き取ったのである。剛志がまだ十二歳、潤子は十四歳の頃だった。
剛志は美しいに一目惚れをした。姉と暮らし始めて、十七歳の時に両親が留守の隙に潤子と関係を持った。
大学の在学中に潤子は一人暮らしを始めて、教員として働き始めた。
剛志は高校を卒業して海外に留学に出されていた。いずれ会社を任せるつもりだと、剛志の父親は言った。
潤子は端正な面立ちから匂い立つような上品さ醸し出す女性で、女教師という職業である。静はそんな潤子の秘密を握り、すすり泣くまで責め抜いたのは嫉妬からだった。
愛撫で静の下着に染みが滲み出すほど濡れると、剛志は強引に下着をずり下ろして、指先で恥毛をかきわけると、敏感な肉粒を探り出す。小さな円を描くように弄る。
剛志は姉の潤子のクリトリスをこうやって愛撫してきたのかと、静は思いながらも快感に身をゆだねて、腰をくねらせながら喘ぎ声を上げた。
剛志は軽く頭を振って、静の唇に自分の唇を重ねた。静は待ちきれないと言いたげに、剛志の口の中に舌を押し込んでねぶりまわしてくる。
病室で痩せ細り、無言で天井を見つめていて、目を開いている時間が長く、瞬きもあまりしないために、ふいに涙を流す潤子の姿が、剛志の脳裏によぎる。
剛志の指先の動きが止まると、静は剛志の股間に手をのばして、さらに激しい快感を求めた。
あなたのすべてがほしい。そのためだったら私は鬼にでも悪魔にでもなってやる、と静は剛志を欲情で潤んだ瞳で見つめ、艶やかな微笑を浮かべるのだった。
剛志がこのとき何を考えているか、静にはわかっていなかった。


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