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サキュバス王女と精霊の巫女たち
【ファンタジー 官能小説】

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古都崩壊(後編)だって、大人の秘密を知りたかったんだもの……ということですか?-1

古都ダーレンから離れた王都クラウガルド。王女シルヴィアの寝室を巡回中の侍女は、王女が一瞬、目を開いて自分を見ていた気がした。
王女の穏やかな寝息と寝顔を見て、気のせいだったと胸を撫でおろした。
地底から現れた芋虫を操り『知識』を集めているのは王女シルヴィアだった。
サキュバス族の遺産である芋虫は永い眠りについて、化石となっていたが、シルヴィアによって覚醒させられて地上に現れたのである。
シルヴィアの母親も一度、化石の卵を覚醒させたが操作まではできずに失敗している。サキュバス族でも力の強い者は、自分の召使いをいくつも持つのである。
召使いに産んだ我が子の世話をさせるつもりだったのかもしれないが、それは今となってはわからない。
シルヴィアは女兵士たちの、いわゆる人には言えない淫らな性体験の記憶を学習した。
睡眠したまま『知識』を獲得したのである。
女騎士シルフィを捕獲したが、他の女兵士たちのように触手が襲いかからない。
大神官レナと細工師が共同開発した鎧や剣、シルフィ自身のそして騎士たちに伝えた法術の力によって、触手は聖騎士シルフィを拘束するまでのところで、手が出せなくなってしまったのだ。
王女シルヴィアは本当は王都に芋虫を出現させたかったが、断念している。人間が多いほど『知識』のバリエーションは豊富なはずだし、統計的にどんなプレイが一般的で、何がマニアックなのかわかるからだ。
しかし、王都クラウガルドは魔法防御は厳重で、芋虫型の拷問道具は侵入できなかった。
したがって、人が集まっていて魔法防御が老朽化している都市を狙って出現させたのである。
ちなみに芋虫は大量の捕虜の拷問、情報収集、洗脳のための道具といったところのものである。
サキュバス族とエルフ族の戦いについてはここではまだ詳しくは語らないが、サキュバス族は捕虜としたエルフ族を繭の中で凌辱し、さらに必要に応じて情報を脳から奪ったり、洗脳して密偵として放った。
これがエルフとダークエルフとして同じ種族で分かれての戦いに発展していくことになった原因となった。
王女シルヴィアが目をさまして、寝たふりをする少し前に話をもどそう。
大神官レナは聖騎士シルフィに思念の声を伝え、呪文を詠唱させた。
すると聖騎士シルフィを拘束していた触手が緩み、シルフィは剣を振るって触手どもを斬り刻み出した。
大切な部下を凌辱された怒りが爆発した。
赤い殻からシルフィが肩で息をしながら、触手を切り刻んだときに返り血のように浴びた体液まみれの姿で出てきた。
斬られた触手から出てきた透明な粘液が、赤い殻から溢れてくる。赤い殻の光が消えて、怒りに震えているシルフィが青白い守護魔法の光に包まれている。
粘液がふれた繭が溶け出した。
さらに赤い殻も溶け出した。
大神官レナが透視の小結界から飛び出してきた。
「エミリア、急いで! シルフィを回収して撤退しますよ」
繭が溶けたあと石膏のように急激に凝固していく。
シルフィは魔法の光に包まれているが他の兵士たちや繭の周囲の建物は飲み込まれてしまう。
「シルフィ!」
エミリアが手をシルフィにのばして、馬を走らせながら背に引き上げた。閉まりかけている古都の大門から飛び出すと、そのまま街道を疾走した。
古都ダーレンの北と東にある大門が閉ざされた。
「三年間は開いてはいけません。生きたまま石像になりたければ別ですけどね」
溶けて破壊された繭と蛹の殻は、触れた者を石化させる。聖騎士エミリアと聖騎士シルフィの故郷はこうして壊滅してしまった。
聖騎士シルフィはこの事件をきっかけに、貴族と平民という身分階級で物事を考えるのを改めた。聖騎士が戦っているのは人間の敵。それに気づいたのだ。
繭の糸を回収できなかった。大神官レナはなぜ兵士たちが凌辱されたのか、考えてみたがわからなかった。
触手が耳の穴から侵入していたことが気になった。
今までの戦いの記録には、耳の穴まで触手を挿入した敵の例がなかったからである。
古都ダーレンが三年間は誰も入れなくなったということは確かである。古都ダーレンそのものに結界を施すことができたのは運が良かった。そうでなければ石化効果の鎮静はできず、被害領域は拡大していた。
王女シルヴィアが目をさましたのは、聖騎士シルフィが蛹の内部を破壊したからである。
石化した街の植物や兵士たちは、三年後には雨風にさらされて砂塵となって崩れ去るだろう。
王女シルヴィアは結果として、平民出身の兵士たちによる、貴族に対する武力蜂起の小さな契機をつぶしたともいえる。
古都ダーレンの領主、つまり聖騎士エミリアの父親は避難した宿場街を開発する計画を立てた。
群雄割拠の時代ならばダーレンは重要な拠点である。だが今では商業都市であり、代わりの土地でも近隣から商人を集めて市場さえ開催できれば、復興できる、との判断である。
古都ダーレンが壊滅して残念がったのは王都の学者たちであった。ダーレンの歴史は王国のどの都よりも古くからあり、古代の集落があった土地ではないかと発掘などが行われていたのだ。
過去の遺物が安全なものとは限らないと、大神官レナは学者たちに言ってやりたかった。
発掘のときに、かつてダーレンを建造した技師が作った魔法力の防御の仕掛けを、知らずに壊してしまったにちがいない。もしくは、いまいましい芋虫の卵でも掘り出したのだろう。
学者たちは魔力を感知できない。
再開発される宿場街を、かつての都のように魔法力を持つ都市にできる技師もいない。
神聖教団と騎士団のやるべき仕事は増えていくばかりだが、法術を使うための基礎になる念力を持つ者は減少しつつある。
大神官レナがサキュバスを王家に王妃として迎える助力をしたのは、王家の者に魔法の力を持つ者を生まれさせようと考えたからであった。
きっと王女シルヴィアの産む子は強い魔力を持って生まれてくるだろう。








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