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サキュバス王女と精霊の巫女たち
【ファンタジー 官能小説】

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古都崩壊(前編)でっかい繭があるんですが……困ってます-1

大神官レナは王都から騎士団からの連絡を受けて古都ダーレンに出向していた。
騎士団の女兵士たちが遭遇していたのは、巨大な芋虫である。
全長5mはある芋虫が地中から現れ、巨大な繭を古都の中央に作ってしまっていた。
「繭の中に閉じ込められた部隊からの連絡は?」
「それが、繭の糸に何らかの魔力があるらしく、通信が途絶えています」
大神官レナが現場に到着するとすでに無事な街の民衆は近くの宿場街に避難しており、現場には騎士団の隊員たちが警戒態勢で古都ダーレンを封鎖していた。
魔力のある糸で一夜にして繭を形成した巨大な芋虫の繭にレナは興味を持った。
この糸を採取して衣服に加工すれば、魔力攻撃からはダメージを受けない、ただし、まとった者は魔法が使えないという特殊な衣服が作れるだろう。
蚕は繭を作る時に、8の字になるように糸を吐き出して先端は、蛾になったときに出やすいように薄くなっている。
巨大な芋虫もおそらく同じで、繭の中には蛹が入っているはずだとレナは推測した。
生糸に加工するには繭を煮るのだが、さてどうしたものか。
繭は頑丈で、外部から剣で斬りかかろうが、槍で馬に乗って突撃しようが弾かれてしまう。
夜襲をかけた部隊は頭を振って糸を吐き続けている芋虫を攻撃したが、そのまま中に閉じ込められた。
中にいる者たちごと繭を煮て、ほぐしてしまえば糸は採取できる。
巨大な鍋などないのでどうするべきか。
繭を大神官レナが来る前に油をかけてタイマツの火で焼き払う作戦が騎士団によって実行された。だが、繭は焼けなかった。
「このまま中の芋虫が羽化して蛾になったら被害は拡大するのでは?」
「繭の内側をほぐすための体液や尿の放出、あと羽が広がったあとの燐粉の散布。巨大な蚕蛾なら飛ばないでこのあたりを走りまわるわね。ただ土の中から出てきたっていうのがよくわからないわ」
「繭の中に閉じ込められている部隊は……」
レナが静かに首を横に振った。
「絶望的ですか?」
「蛹を中の部隊が始末していれば、繭を開く方法は今のところわからない」
聖騎士エミリア・ダーレルは夜襲をかけるという同僚を止めなかったのを後悔していた。
古都ダーレンの領主の令嬢であるエミリアに何かと張り合うように行動していた聖騎士は、十五人の部下を選び連れて行ったまま繭に閉じ込められている。
「羽化まで何日かかるのかも、前例がないのでわからないけど、あの繭は回収して利用価値があるのは間違いないわ」
エミリアは大神官レナが繭を手に入れたいと考えているのがわかり、少し嫌な気分になった。
繭が利用できるとわかれば、蛾の卵から育てて養殖すると言い出しかねない。
巨大な芋虫が地中から這い出るときに、古都は地震のような揺れが起きた。
そのため、エミリアは街の民衆を避難させた。民衆の犠牲者は出てないが芋虫に潰されて倒壊した建物もあるし、糸を吐かれた建物もこのままでは住めない。
透視の法術で大神官レナは繭の中で何が起きているのか、視ることにした。レナの周囲に四方に錫杖が立てられ、そこにしめ縄が張られた。
目を閉じて立っているレナの頭の中に映像と音声が浮かび上がってきた。
古都ダーレンの人々は巨大な芋虫が繭を作っているとは知らずに、数日もすれば故郷に帰れるだろうと思っていた。
異界の森から西方に離れている古都ダーレンでは、獣人の蛮行もなく、異界の森から現れるものに対しての警戒感は薄い。
聖騎士エミリアも聖騎士として叙任され、大神官レナの元で事件の現場にいくつも立ち会うまでは認識が甘かった。
聖騎士シルフィは、ダーレンの裕福な商人の娘で、貴族の令嬢たちとかわらない教育を受けて育った。
だが、彼女の親のコンプレックスの影響を強く受けている。
特にエミリアへの対抗意識は親子ともに強かった。
エミリアが王国の警戒地域、つまり、異界の森の近くで大神官レナの命令で任務を遂行してきたことを嫉妬していた。
聖騎士シルフィは古都ダーレンとその周辺の治安維持を任されていた。
今回の巨大芋虫の出現で、聖騎士エミリアと共同で任務にあたることになり、エミリアよりも目立つ功績を上げようと聖騎士シルフィはチャンスを狙っていた。
領主の娘より平民の娘が功績を上げるには多少の危険は覚悟の上であった。
聖騎士シルフィは、異界のものがどれだけ危険なのかわかっていなかった。
聖騎士エミリアは知っている。
異界のものに挑んでいった何人もの仲間たちが、犠牲となっていくのを見てきた。
真夜中にシルフィの配下の女兵士が、聖騎士エミリアの天幕に伝令に来た。
聖騎士シルフィと配下の兵士たちが夜襲をかけるべく出撃したのである。
大神官レナの到着を待つということで、夕刻の作戦会議では聖騎士シルフィは同意していた。
シルフィたちは糸を吐き続ける芋虫を攻撃していたはずだが、エミリアが馬をとばして駆けつけた時には、繭は完成してしまっていた。
同郷の仲間を救い出そうと、繭を攻撃したエミリアが外部からの衝撃を受け付けず、耐火性もある繭であることを思い知らされたところで、大神官レナが到着。
大神官レナは法術で、繭の中のどこに聖騎士シルフィがいるのか探していた。
繭の中は闇ではなく、淡い赤い光で照らされていた。
蛹が淡い赤い光を放っていた。赤い光を放っている殻はすでにひび割れ、そこから黒い鞭のような触手が這い出ている。
蛹から出ている触手に拘束された女兵士たちは無惨な
姿にされて辱しめられていた。
やっと見つけた。
聖騎士シルフィは蛹の外ではなく、一人だけ内部に取り込まれているのを、大神官レナが察知した。
(聖騎士シルフィ、私の声がわかりますか?)
大神官レナは聖騎士シルフィの意識へ、思念の声で呼びかけた。
聖騎士シルフィが他の兵士たちのように壊れきってなければ、彼女の意識と同調して繭を内側から攻撃することもできるのだが……。





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