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サキュバス王女と精霊の巫女たち
【ファンタジー 官能小説】

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王女様もお年頃となりまして、恋に落ちたようです-1

豪奢な金髪とエメラルドを思わせる碧の瞳のシルヴィアは、亡くなった王妃に顔立ちや声まで似ている。王女の姿を見ると、王は王妃が生き返ってきたか、時が過去に戻ったかのような気がすることがある。
アルリギス王ロバートは王妃を亡くしてから、再婚することがなかった。子はシルヴィアだけである。
王が亡くなった美貌の王妃を偲んで他の王妃を迎えずに十八年を過ごしてきた。
貴族たちは後継ぎとなるのが王女シルヴィアのみであることで、王家の血統が途絶えるのではと危惧する声もあった。
だが、民衆は男がただ一人の女性だけを愛す、これこそ純愛だ、と美談として語ったのだった。
シルヴィアの母親は貴族ではない。
その秘密を知る者は数少ない。
大神官レナは王妃が亡くなったのは病ではなく、ある意味で餓死に近いものであったことを知っていた。
王が盗賊団の討伐で、異界の森に逃げ込んだ敵を追って森から戻ったときに連れ帰ったのは、獣人族でも、見た目では獣人に見えないサキュバス族であった。
サキュバス族は子を孕むことがめったにない。
性行為はサキュバス族にすれば食事と同じであり、膣内射精されても、サキュバス自身が望まなければ孕むことなく精液を摂取するだけなのだ。
王女シルヴィアは人間と獣人族のハーフである。
獣人に対して民衆や貴族たちでさえ誤った認識を信じ込んでいた。
ゴブリン、オーク、トロールなど異界の森から現れて山賊まがいの襲撃をかけてくる獣人族は、野生の熊や狼と変わらないという認識であり、人だと思われてなかった。
王は大神官レナに相談し、森から連れ帰ったサキュバス族の獣人の身分を貴族と偽り王妃にした。
王妃は子を宿して生むと力尽きてこの世を去り、忘れ形見の王女シルヴィアは十八歳となった。
王女シルヴィアが異界の森に帰ってしまうのではないかと、王は心配していた。
大神官レナの心配は王ロバートとは違っていた。王女シルヴィアがサキュバス族の本性に目ざめて、王が実の娘に手を出すのではないか、という心配である。
本来はサキュバス族はゴブリン、オーク、トロールなど人間の女性を犯して孕ませる種族と交わって生命を維持している。
それらがいない王都で成長したサキュバス族が生命を維持するには、男性の精液を摂取するしかない。
王女シルヴィアはベットから月を見ていた。
この夜、大神官レナは助手の青年を連れて月に一度の薬湯を届けに別邸へ来ていた。
本来は王の妾となった女性や王妃や王女が暮らす邸宅だが、王は妾を集めたりはしなかったので、王女と世話をする侍女たちが暮らしているだけである。
なぜ、大神官レナが青年神官を連れているのかは護でも、レナの若い愛人というわけでもない。
王女シルヴィアがサキュバス族の本性に目ざめて、レナの調合した薬湯ではどうにもできないと判断したら餌にするためであった。
ゴブリン、オーク、トロールは一回の射精量は人間よりも多量である。少量の精液で繁殖するという意味では、人間の精液が孕ませる力が一番強い。
サキュバス族にとっては少量でも生命を維持できる人間の精液は最高の餌である。
王女シルヴィアは虚ろな目のまま微笑している。
大神官は王女に幼い頃から与えてきた薬で、王にもシルヴィアは白痴なのだと思わせてきた。
この美しい生きた人形のような姫君は、大神官レナと侍女の区別はついていないのかもしれないと、青年は思った。
陶器の御椀に入れた薬湯をこくこくと小さく喉を鳴らして、シルヴィアが飲み干す。
薬湯を飲んでシルヴィアがベットに横たわり目を閉じて、穏やかな寝息を立て始めた。
大神官レナは青年神官を連れて、王女シルヴィアの寝室から出ていった。
しばらくすると、王女シルヴィアがベットから起き上がって、のびをした。
瞳の色が紫水晶の色に変化している。
大神官レナの投与している薬でシルヴィアの意識は常にぼんやりとしているはずなのだが……。
シルヴィアはため息をついた。
毎月、大神官レナが連れてくる青年神官に話しかけようと思っているのに、いざとなると声をかけられないのだった。
白痴のふりをしている。
初潮を迎えるまではサキュバス族は人とかわらない。
シルヴィアの場合は大神官レナの薬によって幼少期から生きた人形のような状態にされた。
その結果、シルヴィアだがシルヴィアではない人格が心に生まれ、紫色の瞳となっているときは表に出てきているが、普段は裏に引っこんでいる。
大神官レナも人間ではない。
今年で三十五歳のはずだが、小柄な少女のような顔立ちで眼鏡をかけた法衣のレナの容姿は、二十歳前ぐらいにしか見えない。
レナを警戒して白痴のふりを続けているが、シルヴィアは人間と人間ではない種族の者を感知できている。
それは良質の餌を判断するサキュバスの本能である。
レナが連れている青年は人間ではない。
彼は何者なのか。
シルヴィアの野生の本能は、彼を求めている。
獲物としてなのか、繁殖するために適した精液を持つ者なのか、あるいはその両方なのか。
そこまではシルヴィアはわからない。
かつてシルヴィアの母親は食事中に、アルリギス王ロバートと出会った。
サキュバスを輪姦していた盗賊団の男たちは、ロバートを殺害するのを躊躇した。王殺しをすれば、反乱者として一生追われ、捕まれは処刑される。
窃盗で処刑されることはない。
王殺しはできない。
だが、サキュバスに魅了されている男たちは相手が王であってもサキュバスを渡したくなかった。
四人の盗賊は、王と戦闘となり死亡した。
負傷した王の命を救ったのはサキュバスの治癒の魔法であった。
ある夜、美女と出会い、翌朝には美女が姿を消しているという。そんな伝承がある。
それはサキュバス族が一目惚れした相手の子を授かるために、人間の男の前に現れたものであった。
王女シルヴィアは青年の名前を思い浮かべながら、また窓から月を見つめ続けている。


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