なんて言うんですか劣等感-3
現に沙織も、最初の頃は俺のことが苦手だった。
でも、当時の俺は勘違いも甚だしく、ちょっと友達がイケてて人気のある奴が多いと、まるで自分もそうなっているような気になって、だから沙織にアタックしても手応えがあるって確信していたんだ。
だけど、遊ぼうと何度誘っても断られるわ、アドレス聞こうとしてもはぐらかされるわ。
沙織はかなり手強かったけど、勘違い男だった俺には、それがかえって闘争心をメラメラ燃やすことになった。
そして、修の協力も経て、何とかダブルデートにこぎ着けるとこまではできた。
だが、これが大失敗に終わるのだ。
俺と修と沙織と沙織の友達で始めたダブルデート。
あの時の俺は、沙織が誘いにのってくれたことで、確実に勘違い野郎に拍車がかかっていたと思う。
何とか沙織のハートを掴もうと意気込んだっけ。
その時に沙織が連れてきた友達ってのが、現・修の彼女の石澤さんなんだけど、この娘がまあ垢抜けてなくて、とても沙織と仲がいい友達には見えなかったんだ。
今にして思えば、“恋をすると人はキレイになる”って言葉は、まさに石澤さんのための言葉だと思う。
それほど現在の彼女はキラキラ粒子が舞うほど輝いて、可愛らしくなっているけれど、当時の彼女はパッとしない、地味で冴えない女の子という印象しかなかった。
当時の勘違い野郎は、女の子を見た目だけで判断していたから、沙織が連れてきた石澤さんを引き立て役として見下していた。
彼女を小馬鹿にして、沙織を持ち上げれば、沙織に近づけるって、そう思ってた。
それが、人として間違っているとも気付かずに。
そんな折、ふとしたことで、修と石澤さんが険悪ムードになってしまったのだ。
なんでも、修の元カノが石澤さんの友達で、修が別れるときにその元カノに結構ひどいことをしたらしい。
そのことを石澤さんは言及したのだ。
でも、修の中では既に終わったことで、今さら、しかも関係のない人間に責められたことが癇に障ったらしく、キレた修は先に帰ってしまった。
残されたのは、ただひたすらに気まずく、いたたまれない空気。
やっとのことで、沙織と遊ぶ約束をこぎつけ、今日は正念場だと意気込んでいただけに、それを台無しにしてくれた石澤さんに、苛立ちはマックスだった。