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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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私がついてるよ…-2

「んもぅー驚いたよぉー、加藤君から急にアンタが倒れたって聞いて」

彼から電話があってから当然の如く病院へ駆けつけた。ダガその時には既にぐっすり
 眠っていて、その寝顔を目の当たりにし、取り合えず最悪の事態は避けられたと胸を
 撫で下ろした。

最悪の事態は避けられたがそれがどうだって言うんだろ。死んではいない、幾ら持病で
 いずれかは…ダガ、こんな事でホッとしたら彼に失礼だろう。彼がこのまま病院へ
 運ばれる、それはつまり彼はここで一生涯を過ごす事となる、彼だって同じ事を考え
 ただろう、そして悩み苦しんだだろう……。

戻った病室は前に大怪我した時の場所とは違う、そりゃーデザイン等は全く一緒だが
 その部屋の窓から見える光景は別物。前は眼科が見え、今度は前に遊びに行った事も
 ある水族館が見える。

私は何だかどうして良いのか分からないでいる。
 彼の持病は知っていた、こうなる事だって理解はしていた、なのに今こうして平然と
 しているのが不思議であり、ムズムズと怒りがこみ上げてくる。

絆が倒れた、後僅かの命で、もう二度とこの病院から出られないと言う深刻な事態なのに
ショックや深い悲しみがこみ上げてこない、覚悟していたからってこんな感情は。

でも、彼を助けたい気持ちはしっかりと残って。

「大丈夫?気持ちのほうは…」

なでめるようにそう声を掛ける。
 彼を病室まで連れ戻すのに態々体を支える必要は無い、今回は飛び降りをして大怪我を
した訳ではない、体は全体的に弱まってはいるものの、普段は何も障害はない。
 ただ心の方は……。

「……大丈夫だよ、ゴメンね心配掛けちゃって。」
「絆…」

ニコッと笑みを見せる彼。しかし無理をしているようにも見える。
 私は「無理しないでね」と言葉を添え。

彼の中で悪い霧が体中一杯に溜まっているように感じる、私は彼の本音を聞けていない
 でいる。

そんなクイを残しつつ私は痩せ我慢をしている彼を残し、病院を後にした。

「………。」

白い毛布に深く視線を落とす彼。


私は今、ある家へ淡々と足を運んでいた。そこは見慣れた一軒家。
 彼の母に会い、ある相談を持ちかけるのだ、それは…。

「ドナー登録、ですって?」

冷たい氷柱で串刺しにされるような口調で、冷めた目で私にそう言い返す。

私にだって出来る事はある筈、絆の持病で思い悩んでいる事を菫に打ち明けると
 彼女が「ネットで色々情報を調べたら」と助言してくれて。後に「そういう持病を
 抱え苦しんでいるのは彼以外にもいる」とも話し。時よりテレビでそういう類の話題を
耳にする事もあり、私はハッとし、頭に稲妻が走り、取り付かれたようにキーボードを
 叩きまくり、そして目に止まったのがドナー登録だ。

世界中のドナー登録を行った人達の中から適合された心臓を探し出し。そして自分と
 あった心臓が見つかれば、手術をし、上手く行けば完治する事が出来るという。

それにはまず本人とその家族の承諾が必要不可欠である、だから。

「はいっ!これをすれば彼は」
「バカバカしぃ…」
「…え?」

あっさりと一蹴するオバサン。オレンジの夕日が居間の窓を通し、オジサンは仕事
 いずみちゃんは友達の家で、静寂過ぎる重苦しい空気の中、私はオバサンと二人っきり
で深刻な話をする。

バカバカしい?怒りがこみ上げる自分を必死に押さえ、口を開こうとすると。

「そんなの確立はごく僅かよ、テレビじゃよく見つかって助かるみたいな話はあるけど
 現実は違う、ごく僅かな望みに掛け、命耐えるその時まで結局見つからずそのまま
 眠りにつく、絆は特別だなんて思えない。」

真っ向から反対意見を言い放つ彼女、一度は私と同じ事を思いついたのだろうか
 とても今初めて聞かされたようには思えない。

「でも、やらないと助かりません」
「何よ、買わなきゃ当らない宝くじみたいに言って。」
「貴女は助かって欲しくないんですかっ!?」

またも地雷を踏んでしまった、すると再び怒り狂うかと思いきや。

「有難うね杏ちゃん、息子の事を想ってくれて。気持ちは良く解るわ、でも、こっちも
 一杯一杯なの、だから。」

だから諦めろと?
 一杯一杯とは何の事だ、経済面?精神面?
 大きな溜息と共にまるで吹っ切れたように落ち着いた口調で私の誘いを振り払う。

私もこれ以上は説得は無駄と、こちらも大人っぽく突然お邪魔した事を詫び、送られる事
無く、一人この居間を背にした。

「はぁ…」

冷たい風に体を包まれ、恨めしそうに一軒家に視線を送る。




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