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熱砂の凶王と眠りたくない王妃さま
【ファンタジー 官能小説】

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凶王と側近兄弟の千日秘話-6


* 九百五十夜(スィル)*

 ……シャラフさま。きっぱり申し上げますが、見ていてまどろっこしいのです。
 勢いが必要でしたら、媚薬の一服でも盛るという手段もありますよ?


* 九百九十九夜(シャラフ)*

 ……いや、さすがに薄々と……気づいてはいたんだ。
 認めたくない……が、おそらく間違いない。

 ナリーファは、俺との夜伽を全力で回避している……。

 さらに、俺なりに今まで精一杯の愛情を伝えてきたつもりだったが、今ひとつ正確には伝わっていなかったようだとも判明した。
 ナリーファはどうやら、自分は寝かしつける専門職と割り切られ、俺がどこか別の場所で、他の女を抱いているのだと思っているらしい。
 それを聞き出してきたカルンの前で、卒倒しそうになった。

 
―― そ ん な わ け が あ る か !!


 後宮が空になったのを黙っていたのは、お前がやたらに他人へ気をつかうから!! 降嫁にいった女たちのことを、変に気に病むんじゃないかと思ってたからだ!! 
 衝動的に後宮に駆けていこうとしたら、落ち着けと、兄弟二人がかりで羽交い絞めされた。

 くそっ! どういうことだ!? つまり、ああ、ええと……この千日で、俺とナリーファの距離は、まったく縮まっていなかったと!?
 いや、そんなはずは!! ……と、考えてみれば、初日から今も、寝所でやっていることは…………なんと、まったく同じだ。
 ……。
 今夜こそ、ナリーファの心境を、はっきり問いただそう。


* 千夜(シャラフ)*
  
 ……後宮の警備を三十倍にしろ。蟻一匹も逃がすな。


* 千一夜(シャラフ)*

 ナリーファの寝所に来たが、扉を叩くのが怖い。
 昨夜、ナリーファが本気で俺との夜伽を拒んでいると判明した。頭に血が上って、無理やりに犯しそうになった。
 なんとか途中で踏みとどまれたが、拒絶の悲鳴が耳から離れない。
 逃げられたらどうしようと、そればかりが不安で仕方なかった。しかし、召使に聞いたところ、ナリーファはいつもと同じように、おとなしく部屋に篭っていただけだという。

 ―― 安心したが、扉を叩くのに躊躇してしまう。気が重い。

 もう無理強いはしない。
 お前が俺をどう思っているのか、やはり解らないが、今までのように、ここにいてくれ。
 それだけでいい。


* 翌朝(カルン)*

 ……ちょ、陛下!? どうしたんですか、その青あざ!?
 しかも、すっげぇイイ笑顔で……は!? ナリーファ様と、ついに? ……しかも、見事な蹴りって……ええええ!!??

 ナリーファさま、そういう人だったんですか!!!???
 兄貴! 兄貴!! 聞いてーーっ!!


****
 ―― そして「眠れる獅子姫」の真実は、シャラフから側近兄弟にだけ明かされ、千と一日にわたる昼の物語も、ようやく終止符を迎えたのであった。

 ちなみに余談ではあるが、以前にミラブジャリードへ赴いた諜者は、「眠れる獅子姫」の噂も耳にしていたのだ。
 しかし、ナリーファが故郷で正妃に流されていた、根も葉もない誹謗中傷の一部(しかもとびきり出来の悪いガセネタ)と判断し、報告書には記載されていなかった。
 後日、それが判明して、件の諜者はたっぷりとお説教を食らう羽目になったのである。


 終


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