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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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菫、走る-4

「ちょっと!何なのよこの学校は!…普通の高校ね」
「そりゃそうでしょ、相変わらずねぇー」

気晴らしにボケて見せた、お互い見た事も無い学校で、多少の緊張があると思って。
 私達の通う学校から約一時間程度で到達する第二高校。

この日は休日で、人通りは少なく、ただ向こうの体育館で床を叩く音や、叫び声を放つ
 男子の声を耳にする。
 もう試合は始まったのか?あの中に友人のずっと会いたがっていた想い人が居る。
 恋のキューピットを勤めつつも、何処かワクワクしてきた。

「何か楽しんでない?」
「オホホ、まさかぁ。ホラッ!それよりも行くよ!」
「あ、ちょっと!引っ張らないでぇ!」

友人の腕を強引に引っ張り、いざ目的地へ。


室内は若干暑く、ゼッケンに身に纏った少年達が、床にバスケットボールを叩きつけつつ
汗を飛ばし、俊敏に動き回っている。
 観客席には私達とは違う制服に身に纏った少女達が、好きな子の試合を観戦しに来たか
定番ですなぁー。

などと辺りをのんびりと見回している合間、隣に居る友人は身動き一つせず、練習に励む
彼らに視線を置き続けている、その眼差しはとても尖っていた。

あの中に例の想い人が、そう思い彼女の顔を覗くも石像のように全く反応せず、菫と同じ
目線になり、探して見る。ダガ誰がそうなのか判らない、写真何てものは無い、こんな事
なら菫の家に行ってアルバムでも見せて貰えば良かった。

一人判らず無謀に探し回っていると、菫が片手を挙げた、そのタイミングで練習を終え
 ベンチへ向かう一人の男子も手を挙げた。

そういや彼女の話では、彼は横髪が跳ねていたとかまるでキャ○テン翼を彷彿とさせる
 ように。その手を挙げた子も正しくそうだった。

そうか、彼が。ウチの絆とはタイプがまるで正反対って感じね、肉食系男子というか。
 そんな彼らが、首に白いタオルを潜らせ、スポーツジュースで水分補給をしたり、汗を
拭ったり、両手の平と尻を床につけ天井を見上げたりしていて。
 これはチャンスでは無いかと、ボー然と何も行動に移さない彼女の腕を叩き。

「ホラッ!今のうちに」
「で、でもぉっ!」

うじうじと体を小刻みに揺らし、彼の元へ向かおうとしない菫。
 見兼ねた私は溜まらず彼女の弱弱しい背中を強くプッシュし、こけそうな足取りで彼の
居るベンチへ一歩前進し。
 振り返るかと思いきや、そのまま意を決し、ベンチへ歩みよる菫。
 頑張れ!我が友人よ!。思わず両手でガッツポーズをし、勇気を振り絞った友人の
 勇ましい背中に目を追っていると。

コーチとおぼしき男性が声を挙げ、本番前で整列の合図を呼びかける。
 ぐぬぅー後少しだったのに、余計な事を。

菫も同じ思いで、前進していた足を止め、儚い思いを胸に片手を彼のいる方向へ差し出し
あのままじゃ彼らの邪魔になると、菫に声を掛け、手招きをし、我に返るように小走りで
戻ってくる。

肝心な隼人君と言うと、菫の事は意識し、視線が合わさりつつも、コーチの整列を受け
 気持ちを切り替えるように、前を向いてしまい。


本番が始まり、色違いのゼッケンを纏った男子達を交え、先ほど以上に険しい顔に、俊敏
な動きで、一つのボールを奪い合う。

先ほど声を掛けれず、暗い表情で試合に目をやる菫。
 聞き飽きるほど笛の音やボールを床に叩きつける音を耳にする。

「………」
「菫…」

ショックは大きいようだ、そりゃそうだろう、想い人に自分の気持ちをまだ解って貰えて
いないのだから…。

「私、やっぱり帰る!」
「え、ちょっと菫!」

自暴自棄となり、出口の方へと向かう菫。だがそんな彼女の肩を掴み必死に引き止める私
案の定嫌がる彼女、次々と落ち込む言葉を吐く。
 
「ねぇ、あのチームヤバクない?」
「ホントー、点が押されてる」

近くで観戦をしていた女子達が彼らの試合を観るや否や、そう呟く。
 その声で揉み合いが収まり、同時に得点表に目をやる私と菫。

すると2−5で、隼人君のチームが押されている。

「あれじゃーあのチーム敗北カナー」
「カナー」

何だこいつらは…。それはさて置き休憩タイムとなり、両者ベンチへ向かい。
 余裕の笑みを浮かべる相手チーム、それに対し隼人君チームは暗い表情で下を向く者が
多数いて。隼人君は床に視線をやる事は無いものの、吹っ切れたような顔つきで上を向き
それが気に掛かった菫が、彼の居るベンチへ近づき。

「2−5、でもまだまだ、これから巻き返せるよな!」
「なーに言ってんだよ神田、見たかあいつ等の素早い動き、とても太刀打ち出来ねぇー」

神田と呼ばれる隼人君の親友、そんな彼がネバーギブアップの精神を問うも、そんな想い
を踏みにじるように、既に負けモードの隼人君。

それを耳にした菫、眉を尖らせる。

「でっでもよう、これが最後の試合になるんだろ?だったら」
「関係ねーよ、負けは負けだ、仕方がないっ」

次々と毒を吐く彼を制止するかの如く、行き成りバックで彼の頭を叩く菫。
それに驚き振り向く彼。

「まだ勝負は終わってないでしょ!この意気地なしっ!!」
「な…!」

わぁお。顔を酷いくらいに強張らせ、彼を想いっきり睨む、まるで般若に乗り移った
 ように…、何時もの菫じゃない。


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