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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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意外な強敵-5

ちょ、ちょっと! その娘は俺の彼女なんです!


そう言おうとした、そんな折、今まで我関せずだった歩仁内が俺達の元に戻ってきた。


「おし、荷物全部積んだからそろそろ出発しよう」


州作さんと沙織のやり取りを知らなかった歩仁内は、全くもって他人事みたいに、相変わらずの爽やかスマイルで、俺達に車に乗れと促す。


なんかこのまま車に乗るのはモヤッとするんですけど!


なのに、州作さんの振る舞いに、微妙な空気になってしまった女性陣は、逃げるように車に乗り込もうとした。


本間さんが乗り、石澤さんが乗る。


3列目に女子の皆さんが乗るんだろう、沙織が石澤さんの後ろに続こうとした時、彼女の白い腕を掴む奴がいた。


「え、あの……」


突然州作さんに腕を掴まれた沙織は、明らかに戸惑った顔を見せる。


だけど、州作さんは相変わらずの爽やかスマイルのまま、列から沙織を引っ張り出した。


「ちょっと……!」


さすがにそれにはカチンときた俺。


馴れ馴れしく沙織に触ってんじゃねーよ! と、その手を引き剥がそうとするけど、


「沙織ちゃんは助手席ね」


と、有無を言わさぬほど、ハッキリそう言った。


「はあ!?」


沙織よりも大きな声が出てしまったけど、いくらなんでもそれは許せねえ。


だけど、掴みかかろうとする俺を、慌てて歩仁内が制した。


「兄貴、おれが助手席乗るって言っただろ?」


「うん、だけどさ。よく考えたらお前が後ろの方がいいんだよな」


「は? 何でだよ」


「だって、道中飲物飲んだり、何か食べたりするだろ?
 
お前がクーラーボックスから出してやんないと」


「そりゃそうだけど……、だからって中川さんは……」


チラリと俺を見る歩仁内に、目配せをして、なんとか食い下がってもらうように願うけど。


「じゃあ江里ちゃんでもいいけど? 桃子ちゃんは彼氏が目を光らせてるから断念するけど。

やっぱり助手席には、女の子に座ってもらった方がテンション上がるんだよね」


本間さんの名前が出た途端、沙織が助手席に座るのに難色を示していた歩仁内は、手のひらを返したみたいに、


「じゃあ仕方ないな。おれが後ろで皆のお世話するから」


と、言った。




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