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かつて純子かく語りき
【学園物 官能小説】

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かつて久美子かく語りき-1

茅野久美子、19歳。ギリギリ昭和族。日本文学専攻の大学2年生だ。
村井純子とは、大学からのつきあいである。
日本人形のような長い黒髪に、スラリと伸びた手足がちぐはぐな感じがした。だが、目が合った途端に、その妙な違和感はどうでもよくなってしまうのだ。
あの大きな黒い瞳に、きゅんと射抜かれては。自分を丸裸にされるような感覚。きっと、居心地の悪さを感じる人もいるだろう。
それが村井純子の第一印象。
しっかし。あんなにご飯をよう食べる人じゃとは思わんかった……。

日曜の昼下がり。私と純子はお気に入りのクレープ屋さんに居た。
ここは自称グルマンの村井純子氏が発見したお店で、店内の雰囲気も言うこと無しだし、勿論味も抜群だった。
「いらっしゃい!二人とも、いつものかな?」
声をかけてくれたのは藤川さん。このクレープ屋さんで、ドリンクとフロアを担当している。
彼の淹れる珈琲は抜群においしい。かつてはミルク+シュガーのフルコースで珈琲を飲んでいたお子サマな私が、藤川製ならブラックで愉しめるほどだ。あの快い苦味を思い出すと、つい笑顔になってしまう。
「あ、私はキャラメルラテを頼む」
ジュンが付け加えると、藤川さんがカウンターから元気に返事をした。
「へえ。今日はスウィートな気分なん?」
ジュンにそう尋ねると、くすりと笑った。
それが妙に女っぽくて、私はどきりとしてしまった。当の彼女は席につくなり、長い長いため息を吐いた。
「あの……な」
お冷やの入ったグラスを抱きかかえて俯いている。いかにも、これから言いにくいこと言います、という様子だ。
「どうしたん?」
私の問い掛けに、ジュンは首を傾げて、返事とも何とも言えないくぐもった声を上げる。
「あ、いや。大したコトじゃないンだが……」
歯切れが悪く、ぼそぼそ喋っていて、いつものジュンらしい振る舞いには見えない。
「ん?」
私はミルクティー色に染め上げた髪を耳にかけ、待ちの姿勢に入った。
彼女は黒のタートルネックにジーンズという出で立ちで、ただでさえ細い手足が細い枝みたいに見えた。長い黒髪を無造作に結い上げ、悩ましげな表情が艶っぽい。飾り気の無い華やかさに、私は羨ましささえ覚えた。
「あの……、クミコに言わなきゃイケないコトがあるンだ」
後ろから豆を挽く音がし、たちまち良い香りが店中に広がる。私は夢見心地に相槌を打った。
「ええよ。ゆっくり話しんさい」
しばらくして、ジュンは意を決したように私を見つめた。キリマンジャロの香りからやっとこさ自分を引きずり出して、彼女と向き合う。
「あの……」
みるみる内にジュンの頬がりんご色に染まっていく。ぎゅっと目をつぶってから、彼女は口を開いた。
「私っ、滝田学と付き合ってるンだっ!」
…………え?
…………滝田学って?
記憶の引き出しを上から下まで開けまくって、必死にその3文字を検索する。
一件、ヒット!
「ああ!」
思い出した、マジメ君の本名!
……って。
「えええ!!」
珈琲を運んで来てくれた藤川さんが驚く程、素っ頓狂な声をあげてしまった。ジュンが口の前に人差し指を立て、静かにするよう訴えてくる。
「だって!ええっ?……そうなん!?」
目を白黒させている私の前に、キャラメルラテとキリマンジャロが綺麗に並べて置かれた。
「まあまあ、茅野ちゃん。落ち着いて?」
藤川さんの笑顔が私に向けられる。


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