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淫霊記
【ホラー 官能小説】

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見えざる凌辱者-3

強気な口調と甘えた口調のギャップがおかしくて、恵美はね笑してうなずいた。
「次はチョコレートパフェだ」
女子高生はストロベリーパフェを完食した。
「今日は学校さぼり、おねぇさんは?」
「うん……さぼっちゃおうかな」
恵美は女子高生に連れられてカラオケBOXに行った。一人で恵美はカラオケBOXには行かない。
(先輩とは、少し二人ではまってカラオケ行ったけどひさしぶりだなぁ)
女子高生は歌がうまかった。
「今度はメグミさんの番だよ」
恵美が歌い終わると女子高生が拍手してくれる。
「うん、いいね。メグミさんの歌を聴きながら寝たらいい夢みれそう」
二人で適当に歌いカラオケBOXを出て、牛丼屋で女二人で食べてみた。
「他に行きたいところはある?」
女子高生に聞くと「メグミさんのうちに遊びに行きたい!」と言い出す。
「かまわないけど、散らかってるよ」
人なつっこいのと、いちおう痴漢から守ろうとしてくれた女子高生に不思議な親しみを恵美は感じた。
「おじゃましまーす」
恵美の部屋に来て、すぐに本棚に女子高生が近づいて見つめていた。
「あら、何か読みたいのある?」
「んー、いい趣味してますなー、読みたいのいっぱいあるよ」
「紅茶でいい?」
「砂糖とミルクはたっぷりでお願いしまーす」
「はーい」
恵美は彼女のペースにつられてしまった。
とても楽しい。
神崎レイ。下級生からお姉様と慕われそうな凛々しい感じの娘だと恵美は思う。
何を選ぶのか見ていると、レイは聖☆おにいさんを読み始めた。
神崎レイが恵美の部屋までついてきたのは、恵美に憑依しているやっかいなものを祓うためだ。
電車の中で、痴漢と痴漢予備軍の連中の欲望が、念となって恵美に憑依したものを調子に乗らせたのが、レイにはわかった。
恵美や他の乗客には見えなくても、レイには黒い影のようなものが恵美に煙のようにまとわりついているのが、霊視できていた。
神崎レイのノートは魔導書となっている。
恵美に憑依したものは恵美を乱れさせて欲情した男たちに身をゆだねさせようとしたのだ。
(死霊ではないな、死霊ならノートに喰われてるだろうし、恵美さん誰かに恨まれてるのかな?)
魔導書は死霊を吸収してエネルギーにする武器と防具でもある。使いこなせないで、生気を奪われる術者は数知れない。
(さて、どうしたものかな?)
生霊の場合は恵美に対して誰かが呪詛を行っているとみるべきで、強引に調伏すると恵美が道づれにされかねない。
レイがマンガを読んでいるのを恵美は黙って声をかけずに、自分も読みかけの小説を読んでいた。
(ネコみたいっていうなら、私よりレイちゃんのほうがネコっぽいような気がする)
子供の頃、となりの家のネコが恵美の家に遊びにくることがあった。
そのネコは恵美をひっかいたりもせず、リビングの絨毯が気に入ったらしくそこでよく寝そべっていた。
その絨毯は海外に出張した父親が気に入って衝動買いしてきた値段の高い品だった。
父は「お前たちよりネコのほうが価値がわかるみたいだな」と苦笑していた。
夕方にはちゃんと自分のうちに帰る。
恵美はうちもネコ飼いたいとよく言っていた。
そのネコが飲酒運転の車の前に飛び出したので、運転手は驚きハンドルを切った。
そのおかげで通行人が轢かれずにすんだが、ネコがはねられ死んだ。
恵美はネコを飼いたいとは言わなくなった。
かわいそうすぎると思った。
車にはねられなければ恵美のところにネコが遊びに来る時間の事故だった。
飲酒運転の運転手は車は全損したが、軽いムチウチだけで命に別状なかった。事故を見た人が通報して、かけつけた警官が運転手が酒臭かったので逮捕した。
逮捕されてもネコが生き返るわけではない。
先輩は「ネコが飛びだしたのは偶然だよ。別に恵美のせいじゃないだろ?」と言った。
「メグミさん、ちょっと」
「ん?」
キスされた。
恵美の手から読みかけの文庫本が落ちた。
「メグミさんは誰かから呪いをかけられてる。ほっとくと今日みたいなことが起きるだけじゃ済まないかもしれない」
キスされて驚いている恵美は、レイが何を言っているのかわかった。
見えない人は、誰かの呪い。
「いきなりキスしてごめん。気を恵美さんの体に入れて慣れさせないと徐霊できないから」
「徐霊?」
「わかりやすく言うとお祓い」
レイはそういって落ちた文庫本を拾い上げる。
「いつ頃から、淫霊の霊障が現れ出したのか教えてくれる?」
部屋には悪いものがある感じはしない。
自殺者が多発する部屋がある。
その建物そのものが、建ててはいけない場所に建てられいる部屋で、誰が強い念を残して自殺する。
すると、残留した念が増幅して別のものに化けることがある。たとえば神社の神木があった跡地などがそれにあたる。
自殺者が増えるほど、かつて神社を作り祀られていたものに近づいていく。
恵美の部屋はそうした念の溜まり場ではない。
すると、恵美がどこかから拾ってきたか、呪詛の禁呪を行っている者がいることになる。
「恵美さんは心霊スポットとか古い神社とか行ってみる趣味はないよね?」
「ない。お化けとか、なにそれ怖い……」
キスしてわかったのは、恵美は霊視の力も霊を引き寄せる力もほとんどないということ。
憑依されていても、霊障は出ない。
または、まったく気がつかない。
感度が低すぎて同調しないのだ。
電車の車内であれだけ人が集まっているところで、恵美だけが霊障を起こしていた。
すると、誰かが恵美だけを狙って呪詛を仕掛けているということになる。
憑依しているものが強く、感度の低い者にも霊障をもたらすとすれば、恵美よりも感度が良い者は恵美よりも強烈に霊障をとばっちりで受けるはずなのだ。
レイはそれなりに自衛しているから例外だが、それらしい霊障を受けている乗客は見当たらなかった。


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