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好き…だぁーい好きなんだからっ!
【幼馴染 恋愛小説】

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彼女を、支えるもの…-2

「結構借りたね。」
「うんっ!」

鞄の中に、本が六冊ほど詰められている。放課後、菫に付き添って貰い、漫画ばっかり読んでいて、気難しい小説や参考書とは無縁な私が、静かでつまらない図書館へ足を運んだ

借りた本は、「青春ピカソ」「今日の芸術」「出会いを求めてー現代美術の始源」「個展と展示会」など、私とは無縁の美術本ばかり。

「長谷川君、喜んでくれるといいね」
「……そう、だね」

彼が病院で退屈をしないように、絆の大好きな芸術本を渡してあげれば、少しは元気が出るかもしれない。

「にしても時間掛けたよね、二時間以上は歩き回ってたジャン」
「だって、彼が興味持ちそうな本はどれか考えると迷うもん」
「普段私とアイス食べに行く時何て「じゃー私これでいいや」なのに」

人は何故、自分の事だと適当なのに、他人の事となるとこんなに重く考え慎重になるのだろう。

「そういやテレビで「トリックアート」何て物がやってたよ」
「トリックアート?」

いっぺん普通のおっきな絵画のように見えるが、近くで見たり遠くで見たり、はたまた角度を変えて見るたび、絵が変わるという、まさにトリックアート。

「アクセスサッポロで開催されているみたいよ」
「へぇー、いついつ?」
「それは覚えてない、でもデパートとか行ったらあるんじゃない、チラシとか」

菫のお陰で、期待が更に高まった。彼女も私の彼への好意をその想いを理解し、色々と協力してくれるのだ、本当に感謝の気持ちで一杯だ。

その思いを胸に、彼女に笑顔を向ける。

「ありがとう、菫、何から何まで」
「別に良いって事よ、私普段から本読むの好きだから通ってるだけだし」

菫は以前私に「高校に入って、見ての通り引っ込み思案で、周りの子はもう島を作って友達が出来たと言うのに、私だけ小島に取り残されて、一人寂しい思いをしていた所に杏が
気さくに話しかけてくれて。お陰で他のクラスの子達とも打ち解けることが出来たんだよ
だからこのくらい…」と。

「アンタのその明るさは一種の武器、周りをホント元気づけてくれる」
「そんなー、「人間元気が一番サッ!」って小さい頃からお母さんに口癖のように言われてるからさぁー」

「口癖って、最近は言ってないっしょ」
「おうっ?」

商店街を歩いていて、ある店から、聞き鳴れた声を耳にする。

「お母さんっ!?」
「やっほー」

可愛らしい花束等が並ぶ店に、尻尾をフリフリさせるかの如く、上機嫌に手を挙げる母
 私達は花屋に駆け寄る。

「今、帰り?」
「うん、ちょっと菫に付き添って貰って図書館に行ってた」

軽く、私の横に居た菫に視線を移す母。軽く挨拶をし合い。

「それじゃー、私は帰るね、お店の店番しないと」

彼女の親は、八百屋を営んでおり、その娘である菫も、自ら志願して店の手伝いをしていて、経営者であるお父さんは、身長190cmの丸坊主の巨漢で、その体格どうり豪快な性格で、米俵4個を担いで歩いた伝説があるとかで、お母さんもぽっちゃり体型ながら良く
働き、常連客からの評判も良い肝っ玉母ちゃんで。
 私達親子に気を遣い、その場を退場する菫、私達も彼女を暖かく見送る。

「どうしたの?その青い花」
「あぁこれ?プリザーブドフラワーって言うの、もうじき暑い夏がやってくるだろうから
今に飾っとこうと思って」

置いた所で涼しくなる訳では無い、そう母に突っ込もうと思ったけど、その花を抱きしめ
体を無邪気に左右に振る姿を見て、その気は失せ。
 
「暑さも気合で吹っ飛ばせーってね、やっぱ大事なのは気持ちっしょ」

と、突っ込む前に、先手を打たれた、お見事。

「アンタも何か買ったら?」
「いやー、私はお母さんほどお花好きじゃないし、普通にキュートに感じるくらいで」
「そうじゃなくてホラ、絆君のお見舞いにさ」

母に言われハッとする、そうだ、一週間も見舞いにきといて全然気づかなかった。
私は、店の奥へ歩み、隣には一段と綺麗な花が並び。

「何にしよう?」

芸術性を彷彿とするくらい上品な花束見渡し、正直迷う。
 私は鉢植えの底を手の平に乗せ、首を傾げる。

「あっ、鉢植えはやめた方が良いよ」
「えっ?どうして。」
「鉢植えって根が付いてるでしょ?だから「根付く」=「病が長引く」、彼まだ退院出来ないんでしょ?だったら見舞いにはちょっと向いてないかなーって」

日頃、時間が空けば庭に出て、自分の子のように可愛がる花たちに水を注ぎ、時より花友達と、花フェスタの催し物に足を運ぶほど、花を愛す母。
 ゆえに花の知識に関してはほぼ網羅している。
 私は、母のアドバイスを聞き、彼に失礼だし、別のものにする事にし。
 ピンク系の花と、オレンジ系の花を目にして、それを手に取り。

「どっちがいいかな?」

二つの花束を手に持ち、見比べる。

「アンタはどの色が好きなの?」
「いや、私の好みじゃ駄目さ、彼の居る病室に飾るんだし」

そう、なるべく素敵な花を飾ってあげたい、それで少しでも彼の心労が減れば。
 私は色々考えた挙句。

「スイマセーン!これの青いのありませんか?それもなるべく薄い色の」

彼は以前、そよ風に当りつつ筆を走らせた時、ポツリと言った「青空って、身近にある一番の芸術だよね」って、私は何故かその時、彼の柔らかい顔とその言葉を鮮明に脳に刻まれていて。



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