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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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世界で一番、許せないのは……-2


「我々は、キルラクルシュの自由を尊重しただけだ。それのどこが悪いのかね?」

 銀色のひげを生やした吸血鬼が、心外だと言わんばかりに咳払いをした。

「な……」

「ああ、これだから他の種族は気味悪い! 愛とか恋とか、理由をつけて束縛するのが、正しいと思っているんでしょう?」

 絶句するアーウェンへ向けて、赤い巻き毛の吸血鬼少女が舌を突き出す。栗色髪の吸血鬼青年が、その傍らで肩をすくめた。

「仕方ないよ、マリアレナーシュ。人狼は特にしつこい性格なのだから」

「まさにその通り、種族の埋められない溝というところか」

 オリヴァルスタインが大袈裟に拍手をして、勝ち誇った表情を浮かべた。

「これで納得してくれたかな? 飼い犬くん。他種族の言う所の『愛』で、我々なりにキルラクルシュを大切にしていたのだよ。彼女もそれを理解しているはずだ」

「そんな……っ!」

 アーウェンは再び怒鳴ろうとしたが、声が知らずに細くなる。
 吸血鬼は、他の種とあまりにも価値観が違う。そう言われてしまえば、反論できなかった。
 何より、しっかりとラクシュに押さえつけられている事実が、アーウェンの心を暗く蝕む。

「オリヴァルスタイン……違うよ」

 不意に、ラクシュがボソリと呟いた。

「森を出る時……わたし、悲しかった」

「ラクシュさん……」

 驚いて見上げるアーウェンの視界で、胡乱な赤い瞳が微かに潤んで、こちらを見つめていた。

「アーウェン……きみに、嫌われるより……飢えて、死ぬのがいいと、思った……。でも、きみは………私が出て行く、言ったら……怒って、くれた」

 白い手が片方だけ外され、アーウェンの額を愛しそうに撫でる。

「きみは、ずっと一緒にいて……私を、引き止めてくれる……それが、嬉しいんだ」

 吸血鬼たちが肩をすくめ、オリヴァルスタインは、引きつった苦笑いを浮かべた。

「やはり、お前は変わり者だな。だが、躾けのなっていない犬でも、お前が飼い続けたいなら、一緒に連れてくるが良い。……ついでに猫も一緒に飼えば、文句はあるまい?」

「ネコ……?」

 嫌な予感に、アーウェンの背筋の毛が逆立った。

「人間の町って、どこも便利だわ。お金があってやり方さえ心得ていれば、なんでも買えるし出来るのよね」

 プラチナブロンドの吸血鬼美女クリステルライーナが、口元に手を当てて高笑いをした。

「黒い森を後にした時、宝物庫からありったけの財宝を持って出たのよ。白い髪に赤い目の変わった女が、ラクシュと名乗ってここに住んでいる情報も、お金で買えたわ。それに、人を雇ってこいつを誘き出すことだって出来たしね」

 彼女がしゃべり終わると、栗色の短髪をした吸血鬼青年が、鋭い口笛を吹いた。
 人間の立てられる音よりはるかに鋭いそれは、平坦な野原を遠くまで吹き抜けていく。すると口笛の合図に応えて、野原の端にある林から、騎馬の一団が駆けくるのが見えた。

「討伐隊……?」

 信じられない思いで、アーウェンは呟く。
 草と泥を跳ね上げて駆けてくる騎馬団は、間違いなくついさっき、広場で吸血鬼退治を高らかに宣言していた討伐隊だった。
 ただし、明らかに人数が少なく、指令の男を先頭にした討伐隊の騎馬は、たった十騎ほどだ。

「どうどうもー。ご依頼どおり、|二回殺して《・・・・・》から、運んできましたよー」

 指令官が相変わらずのおどけた口調で、鞍の後ろに積んでいた大きな麻袋を投げ下ろす。
 吸血鬼たちはいっせいに麻袋へ群がり、オリヴァルスタインが金袋を指令に放った。

「毎度あり」

 金袋を掴んだ指令はニヤリと笑い、素早く馬を返す。吸血鬼討伐隊のはずだった一団は、あっという間に野原を駆け戻っていった。

「……!! ……!!」

 地面に放られた麻袋はモゾモゾ蠢いて、くぐもった呻きを発している。
 吸血鬼の一人が爪を鋭いナイフの形に変え、麻袋を切り開いた。

「クロッカスさん!?」

 袋から引きだされた九尾猫の姿にアーウェンは驚愕する。


「ぐっ……はぁ、あの餓鬼っ! せめてもうちっと、丁寧に降ろせ」

 顔をしかめて悪態をつくクロッカスは、酷い有様だった。
 麻のロープでがんじがらめに縛られ、いつもパリっと小奇麗にしている服はタイも解け、首元から前面が血まみれになっている。
 外傷はないが、服を染める血の量からして、喉首でも切断されたに違いない。
 三本は青紫色だったはずの彼の尾は、すでに八本が真っ白になっていた。

「オリヴァ……っ」

 ラクシュが黄金色の吸血鬼青年を、引きつった声で呼んだ。
 オリヴァルスタインは縛られたクロッカスの喉元に、鋭い刃の形にした指を押し当てて、優雅でぞっとするほどような微笑みを浮かべる。

「言っただろう、キルラクルシュ。お前が望むなら、犬も猫も飼って良いと。そのために、広くて素敵なおうちを手に入れよう。そこでお前は、また同族と幸せに暮らせるのだよ」

 ククっと喉を鳴らしてオリヴァルスタインは笑い、ラクシュを見つめる。

「キルラクルシュ。お前も本当は、また同族と暮らしたかったはずだ。
 そんな犬を飼ったのは、寂しかっただけだね? だから今、そうして抑えてくれているのだろう?」



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