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雨が雪に変わる夜に
【女性向け 官能小説】

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好敵手-2



 遼は、交番での勤務中もずっと落ち着かなかった。
 彼は朝から同級生の友人に連絡を取って、省悟の電話番号を教えてもらい、その番号に電話した。しかし、留守電設定になっていた。昼休みにももう一度電話してみたが、結果は同じだった。

 夜7時頃にようやく省悟に電話が繋がった。
 遼は噴き上がりそうになる熱い感情を必死で抑えながら、口を開いた。
「省悟か? 俺だ、秋月だ」
『遼か』まるで電話が掛かってくることを知っていたかのように省悟は返した。
「話がある」
『俺もだ。遼』
「8時に『シンチョコ』の駐車場で待ってる」
『わかった』
 省悟はそれだけ言うと、先に通話を切った。

 遼の胸はますます騒ぎ出した。省悟の方からも話がある、ということは、すでに亜紀との関係が深まっている証拠ではないか。彼は自分にまだ亜紀への未練が残っていることを知っていて、その想いを今夜精算させるつもりでいるに違いない。

 制服姿の遼は、いつものように8時少し前に『シンチョコ』の駐車場に着いた。
 そこには、宅配便のトラックが停まっていた。
 遼がその車に近づきかけた時、ドアが開いて、サービスドライバーの制服を着た省悟が姿を見せた。
「遼。久しぶりだな」
 その大胆不敵で偉そうな話し方は高校時代からほとんど変わっていなかった。遼はその声を聞いて胸に熱く渦巻くものが一気に身体中に広がっていくのを感じた。

「仕事の途中だからよ、あんまり長居はできねえぜ」
「わかってる。俺も同じだ」遼は下から睨み付けるような目で省悟を見た。

「あの日……」遼が切り出した。「あの同窓会の日、おまえ、亜紀とどこに行ったんだ?」
 ふふん、と鼻を鳴らして省悟は遼に身体を向け直し、言った。
「二人でホテルに行ったぜ」
「このやろう!」遼はいきなり省悟の胸ぐらを掴み、拳を振り上げた。
 省悟は遼のパンチをかわしたかと思う間もなく、自らも右手の拳を突き出した。
 それは遼の左頬を直撃し、遼は後ろに大きくよろめいた。

「おまえの気持ちは解った」省悟は再び殴りかかってきた遼の腕を掴んで言った。
「な、何だと?」
「まあ、落ち着け、遼」省悟は優しい目をして言った。

 遼の腕の力が弱まったことを確認して、省悟は手を離した。
「おまえがまだ亜紀のことを忘れられてねえってことは、今のおまえの剣幕でよく解った」
「な、何を言ってるんだ、おまえ……」

 その時店のドアが開いて、ケネスが顔を出した。
「何や、遼君。来てたんか。それに省悟も一緒か? 何してんねん、こんなとこで」
「ケニーさん」省悟がケネスに身体を向けた。「俺達ここで決闘してたんすよ」
「決闘やて?」
「そ。一人の女を賭けて」
「穏やかな話やなさそうやな。中に入ったらどうや? 紳士的にテーブルで話つけたらええ」
「そうさしてもらいます」省悟は遼の腕を掴んで店のドアに向かって歩いた。遼は省悟の手を振り払って、憮然とした表情で後に続いた。


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