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雨が雪に変わる夜に
【女性向け 官能小説】

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同窓会-2



「なんだ、遼、今頃」
 同窓会は大いに盛り上がっていた。会場内は喧噪に包まれ、中華料理特有の油とショウガとニンニクの匂いが遼の鼻を刺激した。
「よし、座れ」遼の腕を掴んだ当時の同級生、春男が、酔って加減を知らない力で遼の背中を叩いた。「久しぶりだな、遼。元気だったか?」

 遼は空いた席に無理矢理座らされると、当時学校で生活委員長を務めていた和美がすぐにグラスを運んできた。「秋月くん。待ってたのよ。さあ、飲んで」
 和美は遼のグラスにぬるくなったビールをなみなみと注いだ。「亜紀とは一緒じゃなかったのね」
 春男が言った。「おまえ達、うまくいってんのか?」

 遼は一瞬口ごもった後、できる限りの平静を装ってグラスに手を掛け、言った。「別れたよ。亜紀とは。もう三年になるかな……」

 ビール瓶を持った和美が、ばつが悪そうに顔を顰(しか)めた。

「そうか。ごめん、無神経なこと言っちまって」春男は申し訳なさそうに頭を掻いた。
「気にするなよ」遼はビールを一口飲んだ。

 和美が去った後、遼と同じ学級委員長だった聡美がやって来た。「秋月くん」
「やあ、聡美。元気そうだね」
「やった! 私、秋月くんに会いたかったんだ」
「え?」
「どきどきする。甦るな、あの頃」
 遼は意味がわからずどぎまぎした。「な、何のことだよ……」
「その鈍さ、当時から全然変わってないのね、秋月くん」
 隣の春男が悪戯っぽく笑いながら言った。
「聡美、おまえに惚れてたんだぜ」
「ええ? そ、そうなのか?」
「知らなかったのはおまえだけだったけどな」

 聡美が屈託のない笑顔で言った。「でも亜紀に取られちゃったね」

 春男は黙り込み、眉間に皺を寄せてグラスを口に運んだ。

 聡美は続けた。「でも、亜紀、さっきまでいたけど、いつの間にかいなくなっちゃったわね」
 遼は、腰をもぞつかせて辺りをそれとなく見回した。
「どこ行ったのかな……、ねえ、真也くん、知らない?」
 聡美は春男の向かいに座っていた背の低い真也に声を掛けた。
「え? 何を?」
「亜紀よ。どこ行ったのか知らない?」

 真也はごま団子を頬張りながら言った。「亜紀なら省悟と一緒に出てったぞ」

「え?」聡美の表情が固まった。「しょ、省悟くんと?」
「そ。亜紀、飲み過ぎたから送って行くって」
 遼は出し抜けに立ち上がった。
「お、おい、遼」春男がおろおろしながら険しい顔をした遼を見上げた。
「悪い、春男、俺、帰るよ」
「りょ、遼……」

 遼は急ぎ足で会場を出て行った。


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