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雨が雪に変わる夜に
【女性向け 官能小説】

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初仕事-2

 ケネスもカップを手に、遼と向かい合ってテーブルについた。
 遼がカップをソーサーに戻して、ケネスに訊ねた。
「シンチョコって、ずいぶん前からこの街にありますよね。僕、子どもの頃から何度も来てました。親に連れられて」
「そやな。親父の代からやから、もう20年越えてるわな」
「すごいですね。もうすっかり街の顔になってますよね。チョコもコーヒーもおいしいし、店の雰囲気もいいし。それに、」遼は窓から外に目を向けた。「前の庭の木も立派で、歴史を感じます。プラタナスでしたっけ?」
「そや。偶然やけどこの街の名前といっしょやな。『鈴掛(すずかけ)の木』。この店建てた時に植えた時は、せいぜい今の遼君の背丈ぐらいやったかな」
「どうしてこの木を植えたんです?」
「親父はカナダ人やし、ちょっと西洋的な雰囲気にしよう、思てたんちゃうかな」
「確かに、少し日本離れした風情の庭ですね。この温かい感じの建物にもよく似合ってる」
「おおきに」ケネスは笑いながらカップを口に運んだ。

「通りの近くにある、あの木は、ひときわ立派ですね。」
「何や、あれだけ成長するのん、速くてなー。時々、あの木の下で人を待つ人間がおるわ」
「店のシンボルツリーってとこですか。きっと、今までたくさんの恋人達とかの待ち合わせ場所になってきたんでしょうね」
「近々ベンチでも置いたろかな、思てるねん」
「そりゃあいい! 街の人たちも喜びますよ、きっと」
 遼はひどく嬉しそうにコーヒーをすすった。


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