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美少女
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第32章 私の全てを撮らせてあげる-1

リムジンが森を抜けて行く。舗装路がやがて砂利道に変わり、木の枝が窓を叩くほどに細い道を進んで行く。ひたぎが昴に体を寄せる。リムジンは更に森の奥へと進み、太陽の光さえ差し込まない深い森の中で止まった。ひたぎが不安そうに昴を見つめる。

「ああ、驚かせてしまったかな?ほら、その先に木のトンネルが見えるだろう。あのトンネルの先に別荘があるんだ」

「・・・・・」

「人里離れた場所だから、防犯もあって、こんな作りにしてあるんだ」

「・・・・・」

今日の日の為に新調したドレス、そして、初めて履いた7センチヒールのパンプスが汚れることが気になった。

「姫様お手を」

昴に手を引かれて車を降りる。薄暗い森の先に、中が空洞になった大きな木が倒れている。それがトンネルに見えないくもないが、どう見てもただの枯れ木である。

「私の気分を悪くさせることはないわね?」

「もちろん」

「手を引いてちょうだい」

昴に手に引かれて進むと、トンネルは狭いものの、中の壁は綺麗に磨かれ、足元には石畳が敷かれていた。トンネルを抜けると整備された小道が森の奥へと伸び、しばらく歩くと突然視界が開けた。

森の中の切り開かれた空間に明るい太陽の光が差し込み、一面に深紅の薔薇が咲き乱れていた。その先には美しい洋館が見える。ひたぎの頬が思わず綻ぶ。

昴に手を引かれて薔薇の小道を抜けて行く。庭の中ほどに噴水があり小鳥が水浴びをしていた。薔薇園を抜け、洋館に目を向けるとドアの前に一人のメイドが立っていた。

メイドが二人の姿を認め、丁寧に頭を下げる。本宅でもひたぎを迎えた美しい少女だった。昴は少女を水晶と呼んだ。

「水晶、部屋の用意は出来ているかい?」

「はい。お部屋に森の空気を通してお待ちしておりました」

「部屋で一休みしたい。お茶を出してくれるかい?」

水晶は、二人を二階の部屋へ通すと、丁寧に頭を下げて下がって行った。ひたぎが部屋に入ると押し開かれた大きな窓から森の空気が流れ込んでいた。昴がひたぎを窓辺へと誘う。

「君にこの薔薇を見せたかった」

窓から見下ろすその景色に、ひたぎが目を見張る。一面を埋め尽くす真っ赤な薔薇が、太陽の光を浴びてヴェルヴェットのように輝いていた。

「この薔薇は、ひたぎの為だけに咲いているんだよ」

「人の侵入を頑なに拒むこの場所で、こんなに沢山の情熱が私を待ってくれていたのね。嬉しいわ。とても素敵よ・・・薔薇の香に包まれる。まるで、あなたに抱きしめられているようよ。こんな場所に私を連れてきて、あなたは何をしようというのかしら?」

「素敵な思い出を作るんだよ。ひたぎには薔薇一面のこの景色がよく似合う。この景色の中で君の姿を写真に残したいんだ。いいかな?」

ひたぎが昴の胸にすがりキスをねだる。昴がそれに応えると、ひたぎは昴の瞳を見つめて言った。

「私の全てを撮らせて上げる」

ひたぎが窓に寄りかかり昴を振り返る。昴がカメラを取り出し、ひたぎを捉える。

窓から庭を見下ろすひたぎ。昴を振り返るひたぎ。窓枠にもたれて昴を見つめるひたぎ。ファインダーを通して、ひたぎの美しさを追いかける。その美しさに改めて驚き、心から魅せられる。

鼻筋の通った上品な顔立ち。長い黒髪を風に靡かせ、背筋の通った立ち姿は気品を纏いため息が出るほどに美しい。短めのスカートから伸びる長い脚は、赤いハイヒールを得て、モデルでもそうはいない美しさを誇っていた。

昴がひたぎの美しさに吸い込まれるようにシャッターボタンを押し続ける。

ひたぎの表情が次々と変わって行く。静かに窓の外を眺めるひたぎはどこか儚げで、昴を振り返るひたぎは少女のように純真に見えた。

ひたぎがカメラを真っ直ぐに覗き込む。恐ろしいほどの美しさに圧倒される。シャッター音が鳴り続ける。

「綺麗だ・・・君はあまりにも美しい・・・」

昴の言葉にひたぎの表情が綻ぶ。そして気がつけば、カメラを見つめる大きな瞳がレンズの奥の昴を見つめていた。

ひたぎの瞳が急激に熱を帯びる。


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