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‘剣’と‘魔法’の世界〜サツキ〜
【性転換/フタナリ 官能小説】

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しない!-2

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「ふぅ・・・・」

今日のお客を送りだして、私は少し息をつく。
別に疲れるほどの相手じゃなかったけれど、駆け出しにしては見こみがありそう。それになにより、数年ぶりに現れた‘ふたなり’。

『ご苦労様ね…』

私以外だれもいないはずの室内に、声が響き渡る。でも来る予感はしていたから、別に驚きはしない。

『売女(ばいた)稼業は、あいかわらず順調かしら?ふふっ・・・』

癇を逆撫でることをわざと言う。私は無視して、用件に入る。

「久しぶりに、ふたなりのコが来たわ。貴女が言うところの‘実験体’ね。」

そもそもそれが来訪の理由だろうけれど、一応報告はしておく。

「言われたとおり、無条件で『破惑(はわく)のピアス』をあげといたわ。まぁ、そこそこ見こみもありそうだったし。…今月はそれ以外にも、何人かにあげたけど。」

――「破惑のピアス」。
身につけているだけで、低位のサキュバスのチャームなら無効化できるアイテム。

私のお客のうち、ゆくゆくは魔王城にたどり着けそうな、才能のありそうな勇者にはあげることにしている。
と言っても、私の意志でしているんじゃない。このヒトの指示でしているだけ。

『ちゃんと仕事をしてくれてるみたいで良かったわ。…そろそろ手持ちが少なくなってきたでしょう?渡しておくわね…。』

そう言って、じゃらじゃらとピアスを机の上に投げだす。

――低位のサキュバスにだけ有効とはいえ、結構な価値のあるアイテム。それを事も無げに、こんなに用意できる――その一点だけでも、このヒトは普通じゃない。

「あいかわらず酔狂よね?自分を殺すかもしれない相手に、塩を送りつづけてるんだもの…。」

精一杯の皮肉をこめて言ってやる――でも正直、このヒト相手にそれ以上のことが私にはできない。だって、このヒトにとって利用価値があるから、私は‘イかされ’ずに‘生かされ’ているだけなんだから。

『あら、ご挨拶ね?ウフフフッ…――』

私の皮肉に、彼女は‘女王’のように微笑みかえす――凄惨に、そして美しく、笑む。

『だって・・・・それくらいしないと、誰も私のところまで来れないから、退屈なんだもの…。』

そう言い残して、あのヒトは来たときと同じように、忽然と部屋から消えた。

「――ふぅぅ・・・・っ」

また、息を吐く。今度は、恐怖と緊張をゆっくり吐き出すように。



多分、すべてはあのヒトの玩具。
私も。あのコも。魔物も。勇者も。

そして、この世界も。


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