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冬桜
【SM 官能小説】

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(第三章)-6

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ノガミが病気で死んでから二年がたつ…。

私がノガミと別れてから一年後の冬、病を患った突然の死であったことを風のたよりで聞いた。

淡いスタンドライトの飴色の灯りの中で、ふと目を覚ました私は、深いため息をついた。週末
の夜、いつものように投稿小説を書いていた私は、いつのまにか寝込んでしまったようだ。

マンションの窓の外に拡がる濃い菫色の黎明に包まれた街が、深い眠りについていた。瞼の裏
にノガミの切なすぎるほどの顔がゆらゆらと揺らいでいる。私の性の空洞を覗き、氷の鍵盤の
ような肉襞を彼の視線がなぞっていく。私の中にノガミという男の追憶と忘却が混在し、まる
で霧氷のように淡く模様を描いていく。


霞んだノガミとの懐かしい性愛が冷たい雲海となり、肉襞の中で微かな渦を巻き始める。
ノガミが私の中に放った性のぬくもりが、色褪せた宝石のように凝固し、砕かれ、その破片は
性の傀儡となって肉奥に物憂げに佇んでいる。

冷たい精液の断片におおわれた子宮。無為に積み重ねられた追憶。その追憶の果てで切なく
歌い続ける茫漠とした私の愛と性…。その私のすべてが、散り始めた冬桜の花びらのように
黎明の空にはらはらと舞い続けていた。

あの頃、ノガミに抱かれながらもタツヤを受け入れたことに、私は今になって微かな戸惑いさ
え感じていた。タツヤと初めて出会ったプレジールという店の写真の中のモデルの男が、タツ
ヤ自身であることに私は気がついていた。タツヤは待っていたのだ…。あの写真に吸い寄せら
れてくる女…それが私であることを…。




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