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LOVE AFFAIR
【アイドル/芸能人 官能小説】

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1.過去は消えない-2

 遠回しに言うと、梨乃はネイルを乾かすために手のひらをヒラヒラとさせながら悠花の方を向いて、しばらく呆気に見つめた後、急に甲高い下品な笑い声をあげた。
「ちょ、瀬尾ちゃん〜。……勘違いしてるし。合コンとかそういうのじゃないよ」
「あ、違うの?」
 勝手に想像を膨らましていたのが恥しくなって、照れ笑いを返し「そうなんだ。え〜、すっごいハズいじゃん。私ずっと不安だったんだけど」
「ごめんね、でもウケる」
「あ……、なら、どこに行くの?」
「んー……なんか、うまく言えないんだ。それが何、って、どう言ったらよいモンか、名前わかんねー、みたいな」
 何だろう、と思っていると、「ここだし」と梨乃が地下鉄を降りたのは学校からも家からもかなり離れた繁華街だった。といっても、渋谷や池袋といった同年代が集まるような所とは雰囲気が違った。御徒町近辺は猥雑な街並みが広がっていて、梨乃は高速道路の高架を潜り、制服姿のままお構いなしに更に猥雑な界隈へと進んでいく。
「ねぇ……」
 話しかけようとしたところで、梨乃は外観はかなり古びた雑居ビルに入り、エレベータへ乗り込んだ。壁に貼られているフロアガイドを見ると、1〜4階はカラオケボックス、5〜6階は個室ビデオ、7階はマッサージ。一見よくあるような雑居ビルだが、押したボタンは最上階。フロアガイドには"Love Affair"とだけ書かれていた。
 悠花は訝しんだ。悠花には店名に潜む意味、英語圏でその言葉がどういった意味に捉えられるのかを知っていた。エレベータを降りると、店名だけが記されたプレートが取り付けられた、古いタイプのマンションのような鉄扉があった。開くと中は薄暗い。入ってすぐにカウンター。その向こう側のカーテンから、一人の男が顔を出した。
「よう、おつかれー」
 白いワイシャツに黒のスーツ姿。ネクタイはしておらず、通常より一つボタンを外したワイシャツの胸元から金のネックレスが見える。逆立った金髪に薄めの眉毛。
 何より、袖口から手の甲へ覗く蛇柄の刺青……。
 海外でタトゥには慣れている悠花でも、刺青云々ではなく全体的な風体が、ここに来るまでにすれ違った誰よりもチンピラ然としていて、いきおい不安にさせられた。
「……その子?」
 値踏みをするように悠花を眺めてくる……すでに170cmに迫る身長に黒髪のポニーテールだが、野暮ったくなくむしろ垢抜けていた。「いいじゃん、いいじゃん。へえ、リカちゃん、こんな友達いたんだ?」
「でしょでしょ?……この子なら、アノ服OKじゃん?」
 梨乃は偽名で平然と会話をすると、悠花をカーテンの向こうへ促した。四畳半ほどの、窓もなく薄暗い小部屋だった。
「クローゼットの一番端に掛かってるよ」
 背中からあの男の声が聞こえる。
「ね、ちょっとここ……、何?」
「大丈夫、大丈夫。……そんな顔しないでぇ、ちょっと私助けると思ってさ?」
 クローゼットを開けると、そこには様々な学校の制服が並んでいる。
「ほい、コレに着替えたら大丈夫だから」
 男の言ったとおりの、一番端に掛かっていた制服をハンガーのまま手渡してきた。受け取って、どうしたらいいかわからず立ち尽くしていると、梨乃も制服を一つ手にとり、手早くブラウスを脱ぎ捨て、着替え始める。
「それは多分、ちゃんとクリーニングしてるからキレイなやつだよ。……私のは誰か着てるかもしれないけど、それはサイズ的に、他の子には無理だし」


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