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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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そうだ ごはん買いに行こう。-2

「ん……」

 宜しくお願いします。と、ラクシュは軽く頷く。
 彼の作る特製のチョコケーキは、ラクシュの大好きなおやつだ。卵は使わないし、バターの代わりに植物の油を使ってあり、とても美味しい。

 アーウェンは人狼だから、お肉をいっぱい食べなくてはいけない。
 彼は自分用にちゃんと肉も焼くけれど、ラクシュが少しでも多く食べるように、野菜だけの料理を一生懸命に工夫して作ってくれる。
 卵もバターも牛乳も受け付けない相手への食事作りは、とても大変だろうに、アーウェンは文句も言わず、魔法みたいに美味しいものを作ってくれるのだ。

 何年か前、街へ魔道具を売りに行った帰りに、食堂で野菜だけと確認してスープを頼んだら、鳥ガラでだしをとってあった。
 その場でのた打ち回って吐きまくり、毒入りスープかと警備兵までくる大騒ぎになったのだ。
 食堂の店主には、自分も悪かったが二度と来ないでくれと言われてしまった。
 最悪な気分だったけど、ラクシュを吸血鬼ではないかと疑い始めていた街の人々が、騒動を聞いて、血肉を拒否するなら吸血鬼ではないと見てくれたから。よしとするべきか。

 この辺りの人々は、魔族に比較的寛容だ。危険な古代遺跡や魔獣退治に挑む、冒険者が多いからだろう。パーティーの仲間に人狼やケンタウロスが含まれているのも、そう珍しくない。
 だが、さすがに人の生き血を糧にする吸血鬼だけは、即座に退治される。


 吸血鬼も、普段は人間とほとんど同じものを食べている。
 人間の血を吸うのは、せいぜい一年に一度くらいだが、飲まないと、どんなに食事をしていても、弱りやせ細っていき、最後には飢え死にしてしまうのだ。

 でも、ラクシュは人間の血を一滴も飲めない。
 鳥や牛の肉を食べれないように、少しでも口にすれば気分が悪くなって吐いてしまう。

 その代わり……。

 そんなことをぼんやり考えながら、二杯目のスープを口に入れる。
 匙ですくう真っ赤な液体は、ここから国三つほど離れた故郷を思い出させた。

 黒く深い森の奥に、古城と小さな町があり、そこに吸血鬼たちは暮らしている。
 古城の中庭には赤い泉が数個あり、数十年に一人づつ、その泉から吸血鬼は生まれるのだ。
 吸血鬼は幼女の時もあるし、青年の時もある、老人だったり少女だったりもする。そして一生涯をその姿で過ごす。

 他にもこの世界には、人狼や、鳥人《ハーピー》に半人半蛇《ラミア》にケンタウロスを産む泉もある。
 人間達が「魔物」と呼ぶ生物を生み出す泉が、なぜどうやって作られたのか誰も知らない。
 だがとにかく存在し、壊すことも不可能なのだ。

 そしてラクシュが生まれた時、いつもは赤いままの泉が、なぜか真っ黒に染まったらしい。自分が異質な原因はそれで、きっと泉の調子がおかしかったせいだと思う。
 たまに、そういうことがあるらしい。
 泉は時おり、壊れるようだ。その時に生まれた魔物は異形の姿をしており、すぐに身体が溶けてしまう者も多い。
 しかし、ラクシュはやや表情に乏しいものの、見た目は普通だった。

 壊れて異質だったのは中身だと知ったのは、少し後になってからだ。



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