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人狼少女は本能のまま恋をする 
【ファンタジー 官能小説】

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初夜の花嫁-2


(ダメダメ、こんなんじゃ! せっかく夢がかなったんだから!)

 頭を振って自分を叱咤すると、肩の長さで切り揃えたまっすぐな黒髪が、動きに合わせて軽やかに踊る。
 前髪の一部は、星型のピンで留めていた。
 狼に変身すると衣服は破れるか落ちてしまうけど、この位置なら、ピンは狼になっても短くなった毛皮に留まったままだ。
 髪色は母親ゆずりでも、アーモンド型をした琥珀色の瞳は、父親似とよく言われる。
 そして慎重な双子の兄とは大違いで、何かと向こう見ずに突っ走る性格も、人狼の典型的な特徴らしい。

 ハーフでも、自分の中身は限りなく人狼に近いのだと、幼い頃から感じていた。
 父のように濃すぎる凶暴な血を抑える鎮静剤が必要になることはないが、月の明るい夜には無性に変身したくなるし、正体を隠して人間の街で暮らすのも、たまに窮屈と感じることもあった。
 だが、人間の母を始め、幼馴染のシャルロッティやその両親、フロッケンベルク王家やその関係者の一部など……アンが北国の脅威として恐れられていた人狼の血を引いていても、普通に接してくれる人たちがちゃんといた。
 だから不幸と思ったことは一度もなく、双子の兄が言うように、自分たちは少し変わっているけれど、それはむしろとびきりの幸運だと思っている。

「……アン、入っても良い?」

 不意に幌馬車の入り口を塞ぐ布の外から男の声が聞こえ、アンは文字通り飛び上がった。

「は、はい、うん、い、い、いいよ! 大丈夫!」

 動揺丸出しな返事に、垂れ布の向こうで相手が噴出したのが聞えた。

「可愛いな。そんなに緊張してるんだ」

 赤毛のスラリとした青年が、布を開いて入ってきた。
 とりたてて長身というほどではないが、均整のとれた体つきは、しなやかで俊敏な豹を思い起こさせる。
 薄手の柔らかな布で作られたチュニックと、腰帯を締めたズボンという、隊商の男性がよくしている服装だ。
 ややクセの強い赤毛には、黄緑色の柔らかな布をゆるく巻いている。
 もっと暑い地方の男性がするような、きっちしりた白いターバンではなく、バンダナとの中間のようなものだ。日よけには少々役不足だろうが、緊急時の包帯や綱がわりなど、何かと役に立つらしい。
 陽に焼けた顔は、整っていながらも親しみやすさを滲ませ、口元にはいつも愛嬌たっぷりの笑みを浮べていた。

「だって……」

 反論しようとした声も小さくなり、顔が赤くなってしまう。夫となった相手をまともに見られない。

 ―― 昔から勝気で男勝りな性格と言われたし、度胸なら人並み以上にあるつもりだったけど……すいません。
 とんだ自惚れでした。
 アンは内心で、今までの驕りを恥じる。

 十五・六で結婚する女の子も珍しくはないし、恋人と早々に関係をもってしまう子も多い。
 フロッケンベルク王都では、錬金術ギルド製の避妊薬がごく手軽に購入できるし、少し値は張るが、処女膜再生薬なんてものまである。
 そういうものがあれば、つい性的に奔放になってしまうものだ。

 アンは昔から心に決めた相手がちゃんといたから、他の男と関係を持ちたいなんて思わなかった。
 しかし、そういう話は自然と耳に入ってくるから、初体験への心構えだけはしていて、自分だって楽にこなせると信じていた。

 チェスターはきちんと約束を守ってくれ、この結婚を家族や友人も祝福してくれた。(父が鎮静剤を、いつもより多く飲んでいたのは、きっと見間違いだ)
 何もかも上手く行って幸せなはずなのに、いざとなったら緊張しきってしまい、どうしたらいいのか解らなくなる。



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