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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの道1-3

「あーあ、久留米さんがあたしを嫁にもらってくれたらずっとそばにいられるのに」


「だって、お前あと任用期間が1年残ってるんだろ?

与えられた仕事はちゃんと責任持てよ」


「……出た、クソ真面目男」


あたしがあっかんべーをして久留米さんを睨んでやると、すかさずあたしの頭に紙くずがポンと飛んできた。


そして彼は、また知らんぷりして荷造り作業に没頭する。


そんなそっけないところは慣れたつもりだけれど、やっぱり自分の好きの方が比重が重いとなんとなく不公平な気がしてくる。


以前なら想いが通じるだけで充分だったのに、いざそれが叶うと今度はもっともっと心が欲しくなって、たくさんの好きを態度で示して欲しくなる。


ホント、あたしって底無しの欲張りだ。


彼の性格上、安易に結婚なんて持ち出さないのはわかっているけど、なりふり構わずあたしを連れ去ってほしいなんて、ドラマみたいな展開を期待してしまうあたしは、まだまだガキなんだろうか。


ほんの少しでいいから、あたしと離れたくないって気持ちを見せて欲しいのに。


平然と荷造りしている様子を見ていると、たまらなく不安になる。


「久留米さんはあたしと離れ離れになっても寂しくないの……?」


彼の大きな背中に問いかけると、彼はせわしなく動かしていたその手をピタリと止めてこちらを見た。


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