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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの道1-12

目をほんの少しだけ開けた状態のあたしの黒目はグログロと右に左に行ったりきたりを繰り返していた。


『すっげえ、これが眼球運動ってやつか。

ちょっとしたホラーだな』


動画の中の久留米さんは、笑いながらそう呟き、ひたすらあたしの寝顔を映していた。


15秒ほどの短い動画だったけど、これが終わったあたしはムカついたあまりおもいっきり久留米さんのほっぺをつねってやった。


「いてえって、何すんだよ」


「うるさい! 人の知らない間にこんな動画まで撮って………!

そういえば、前にもあたしが寝てる隙に顔に落書きしてくれてたよね!」


そうだ、あたしがここに泊まりにきて、朝起きた時に“おはよう”とさわやかに挨拶をしたら思いっきり噴出されたことがあった。


不思議に思いながら顔を洗いに洗面所に向かって鏡を見た瞬間にあたしはその理由に気付く。


コイツはあたしが寝てる間に、人の化粧ポーチからアイブロウペンシルを失敬すると、あたしの眉毛をつないで描いて、額には“肉”と描き、さらには鼻の下にちょび髭を。あげくにほっぺにはナルト模様を描くというとても大人とは思えないイタズラをあたしにしていたのだ。




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