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5千円のハグ
【その他 官能小説】

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後悔-2

5千円札はまだ手元に8万ばかり残っていたので、ワイは家の近くのスーパーで買い物をした。
野菜と細切れ肉とカップ麺を買うとレジに向かった。もちろんそれだけでは5千円もかからなかったけどなあ。
すると意外な人物に会った。商店街の八百屋のロクさんだ。
「坂井さん、インスタントを食べているのかい?」
後ろから買い物籠を覗くとそう言った。
「なんや? なんで商店街の者が天敵のスーパーに買い物に来るんや」
「やっぱり、あの噂は違うな」
「なんや、なんの噂や?」
「1等を当てたのは実は意外や意外、坂井さんだったって噂さ」
「あれまぁ、ワイはそんなにリッチな男に見えるんかいな。まあ、心は豊かであることは確かやがな」
「それだよ。ミステリーでも一番怪しくないのが真犯人だったりするじゃないか。
その論理だよ」
「いったいどの論理や。アホくさ。怪しくしたくても先立つものがないから、どうしようもないんや。人の身になって考えてみいや」
「一時噂になったよそ者説はあれは間違いだったんだ。地元の人の親戚でこっちに来たついでに買い物して帰ったとか。
今回また顔を出したんで、わかったが。宝くじも当選を確かめないで財布の中に眠ったままだった。もちろんハズレ券だ」
「はああん」
「それと、商店主がこっそりくすねた説は駄目になった。
渡した券の数と残った券の数の合計がピッタリ合っていたからだ。
つまりそうなると地元の人間ってことになる。
はずれ券だったと言って捨ててしまったと言う者は、坂井さん、あんたを含めてわずか3人なんだ」
「ほおおう? ずいぶん調べたもんやね」
「1人はお小遣いが欲しい盛りの女子高生だ。母親に頼まれて買い物をしたらしい。
だが装飾品一つ、洋服一つ新しく買ったような気配がない」
「ふむう、ロクさん、あんたの論理で行けばかえって怪しいんじゃないかあ。
若い子が1年以上洋服も買わないなんて」
「もう一人はごく普通の主婦だ。つまり女子高生と同じで女であると同時に家族がいる。
女なら金が入れば服装が変わる。家族がいれば必ず家族に打ち明けるだろうし、そこから必ずどこかに漏れる。だがこの2人にはそれがない」
「はあ……となるとロクさんの得意な消去法でワイが犯人ということになるのかいな?」
「そうだ。あんたは男で服装に拘らないところは女よりもあると思う。それに独り者だ。家族から秘密が漏れることもない」
「じゃあ、ワイに決定やな。ロクさん、宜しく宣伝しといてや。今度商店街行ったときに急にサービスが良くなったりしてなあ」
ワイがそう言うと、ロクさんは笑ったんや。

 


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