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氷炎の魔女・若き日の憂鬱
【ファンタジー 官能小説】

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一人目の相手-2

「私、あの日まで気がつかなかったけど、ロルフを誰にも渡したくないくらい、大好きだったらしいの! それに、それに……ド淫乱な身体だったのよ!」

「……ド、いんら……ん?」

 防音魔法がかかっているのを幸いに、思い切り大声で怒鳴った。

「ロルフとキスしたり抱かれるのを想像しただけで、とんでもなく気持ちよかったわ! 本当にされたら、きっとメチャクチャに乱れまくっちゃうわよ! そんなみっともない姿を見られて、嫌われたくないじゃない!! 大好きなんだから!!」

 思い切りまくし立て、ハァハァ息をきらせて顔をあげると、ロルフは唖然としていた。

「シャルって……変なところで、頭悪かったんだな」

「なっ!?」

 ぼそっと呟かれたセリフに驚愕する。
 「頭が悪い」なんて! 「性格が悪い」なら、数え切れないほど言われたが、それだけは生まれてから一度も言われた事がない。

「あー、まったく……まさか嫌いどころか、好きすぎるって言われるなんてなぁ」

 くっくと、目端に涙まで浮べてロルフは笑い転げていた。

「ちょっと! 笑うことないじゃない! 私は人狼のつがいという習慣に対して、真剣にあらゆる角度から、自分に可能かを考えただけで……っ!」

 最後まで言えなかったのは、人型をした漆黒の狼青年に抱きしめられ、唇を同じもので塞がれていたからだった。

「んっ!? んんん〜っ!!」

 ドンドンと厚い胸板を叩くが、強靭な身体はびくともしない。
 唇を悪戯するように舐められ、解けた隙間から舌が忍び込む。口の粘膜を触れ合わせているだけなのに、淫蕩な痺れがそこから全身に散らばり、足がふらつく。クチュクチュと濡れた音が聞こえ、肌があわ立った。顔に血が集まって、頭の芯がジンジンと鳴る。
 ロルフは最後に軽く音を立てて唇の表面を吸い、ようやく名残惜しそうに口づけから開放された。

「ああ、本当だ。シャル、凄く気持ち良さそうな顔してる……」

 陶然とした声で呟かれ、羞恥にいっそう頬が火照っていく。

「っは……はぁ……だから、言ったのに……ロルフはこういうの、練習したことあるの?」

 常のロルフには想像もつかない行為ばかりなのに、なんだかやけに手際がいい。
 思わず尋ねてしまうと、心外だとばかりに眉を潜められた。

「俺だって今のキスが初めてだよ。シャルみたいな幼馴染がいたら、他の女の子が目に入るはずないだろ」

「っ!?」

歯が浮くようなセリフに絶句していると、狼青年はニヤリと笑い、シャルを横抱きに抱える。

「でも、男が九割の士官学校なんか、話題はすぐそっちの方に回るからさ、予習くらいできる」

「はあっ!? 学校で何習って……あっ!」

 寝台に降ろされ、軽く前髪にキスを落とされただけで、語尾が跳ねる。

「……ダメだ。あんなこと言われたら、抱かずにいられない」

 耳元で囁かれる低い掠れた声は、確かに聞きなれたロルフのものなのに、やけに色気があって、腰の辺りへ鈍痛のような感覚が襲う。
 頬に額に、ついばむような口づけを何度もおとされ、そのたびに短く息を飲んだ。
 大きな身体に組み敷かれたまま、ゆっくり手を持ち上げられ、指をパクリと咥えられる。

「ひっ、あ……ああ……」

 暖かく柔らかな感触に、シャルの喉から細い声が勝手にあがった。

「メチャクチャに乱れまくった、ド淫乱なシャルを見せてよ。俺はそんなシャルも全部、もっと好きになる」

 ロルフは見せ付けるようにシャルの指先を舐め、凶暴な光を宿した瞳で要求する。

「っあ……」

 ビクンと身体を震わせ、思わず頷いてしまった。
 どんなに優しげでも、ロルフは結局、北の略奪者たる人狼だ。
 欲しい物は必ず手に入れる、凶暴な血を引く者だ。
 そしてシャルは、それを含めて全部、ロルフが好きなのだ。

 ――とにかく錬金術師で良かった。部屋の薬鞄には、傷薬から避妊薬まで、一そろいが入っている。




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