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同級生 石崎佑香
【制服 官能小説】

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責務と矛盾-1


ここは、M市M駅構内 。

「キャァー・・・」
人混みを切り裂く様な少女の甲高い叫び声が、早朝の駅の構内に響き渡る。
美しくも可憐な少女の前に、刃物を持った男が現れる。
その目には精気無くうつろではあったが、男の少女に対する想いは尋常ではなく俗に言う「ストーカー」であった。
もちろん少女もその男に対する面識も無く、まさに男が一方的に歪んだ好意を寄せていたのである。
男は30代半ばでどう見ても少女と釣り合いの取れぬ年齢に容姿であった。
そして少女は天女の末裔たる石崎佑香が成長した姿であった。

「・・・何故?、何故なんだ?、・・・佑香ちゃん・・・」
見知らぬ男は佑香の名を呟きながらにじり寄る。
突然の恐怖に震え立ち尽くす佑香に、常軌を逸している男は躊躇う事無く襲いかかる。

「どすっ・・・」
逃げる間も無く、鈍い衝撃音と共に佑香の腹部に狂乱の刃が突き立てられる。
ほどなくして、深紅の鮮血がタイル上に流れ伝わる。
またひとり、天女の末裔が消えたる瞬間と思われた時。

「なんだぁ、てめぇーは?、邪魔だ、邪魔、どけぇーっ」
佑香と自分の間に身体を割り入れた少年を突き飛ばすストーカー。
少年は力無く、タイル床に崩れ落ちる。

再び佑香に襲いかかろうとするストーカーの手に刃物は無かった。
刃物は突き刺された少年の腹部に在る形で取り上げられていた。
少年の両手はしっかりと自身に突き刺された刃物を掴んでいる。
タイルに滴る鮮血は、佑香から流れ落ちた物では無く少年の物だった。

ほんの数秒間の出来事であった。
周囲がざわつき始める。
凶器が無い事で漸く周囲の大人が、5人がかりでストーカーを押し倒す様な形で取り押さえる。
その後警官と救急車の到着に数分を要する事になる。

恐怖で脚の震えの止まらない佑香であったが、その身を挺して自分を守ってくれた少年に歩み寄り跪く。
腹部より大量の出血をし青白い少年の顔を伺い見ると、その見覚えのある顔に佑香は驚きを隠せなかった。
そして少年の名を数年ぶりに口にする。

「せ、せん、千章君・・・」
その名を口にすると同時に、大粒の涙が止めど無く佑香の頬をつたう。
同時に自身の内に秘める何か・・・、想い起せぬ何かの記憶が疼き始める。
遠い昔に「観た」様な光景。
自分なのに自分では無い自分が何故かそこに居る。
目の前で起きてしまった事を、自分は何度も目にし経験している?
僅かであるが佑香の記憶が過去を振り返る。
しかしすぐ近くで自身に呼びかける声に、現実世界へと呼び戻される。

「覚えててくれましたか、石崎さん。どうしても貴女に詫びを言いたくて来てみたら・・・、でも良かった」
その様子からは信じられぬ程のしっかりとした口調で、少年は再会した佑香に受け答えする。

「・・・いいの、そんな事よりすぐに救急車が来るから、しっかりして・・・」
激しい出血を見せる千章少年の腹部に手をあて、複雑且つ神妙な表情で命の恩人に向き合う佑香。
その手はもちろん、身に付ける制服にも見る見る少年の血が沁み移る。

「大丈夫、痛くは無いんです。ただ頭が軽くなって・・・ひどく眠い気分・・・。まるで温かいお湯の中に浮かんでいる様な・・・、それに貴女に逢えて・・・悪い気分じゃない」
それが死に直面する状況だと理解した上で、千章少年は状況を冷静かつ正確に佑香に伝えた。

「・・・、・・・、・・・」
佑香は何も言えなかった。
千章少年の様に状況を正確に理解出来た訳では無いが、おそらく自分が想像している最悪の結果を本能的に感じ取っていた。

「これで・・・あの事は許してもらえないでしょうか?」
少年は今日ここに来た目的を少女に伝える。

「・・・」
無言で小さく頷く佑香。

救急車が到着し少年はストレッチャーに乗せられる。

意識が薄れゆく少年はもう声を発する事が出来なかったが、その口元はこう言っている様であったと少女は記憶する事になる。
「また・・・逢えたら・・・」

「必ず・・・」
不思議な感覚に囚われながらも、佑香は自ら意識する事無くその後にこう続ける。
「次の私が貴方を・・・、貴方を必ず・・・れます」
自ら口にした佑香であったが、その意味すら理解出来なかった。

その不思議な約束が果たされるのは、・・・年後となり佑香が口にした通り・・・となる。


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