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冬桜
【SM 官能小説】

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(第二章)-7

次々と欲情の波が肉襞に押し寄せ、生ぬるい蜜汁がぬかるみ、息苦しく喘ぎ始める。止めるこ
とのできない欲情は、苦痛によってどこまでも浄化しようとするタツヤの肉体をとおして今に
も血潮となって飛び散ろうとしていた。私の胸の鼓動が少しずつ高まり、陰部の中の疼きだけ
が、はっきりとした意識となって膣奥を身震いさせる。


ビシッーッ… ビシッー あうっ…

鋭く振り下ろされる私の鞭に、タツヤは咽喉を仰け反らせ、小刻みに震わせる胸肉の谷間に汗
を滲ませる。私はまるで獣にとりつかれたように彼のからだに次々と鞭を叩きつける。

鞭の先端が彼の背中に舞い、胸部に絡み、臀部の肉を跳ね上げる。幾筋もの赤い条痕が刻まれ
ていくタツヤの肉体は、やがて溶けた鉛のような汗を滲ませ、彼の窪みのすべてを潤ませて
いく。

不意にタツヤの肌に潤んだものから甘い匂いが漂ってくる…。鼻穴、唇、そしてペニスの鈴口、
臀部のすぼまり…いや、体中の毛穴からさえも、その匂いは、まるで私のからだに群がる無数
の蟻のようにじわりじわりと私を息苦しく蝕んでいくようだった。

鞭の痛みに息を荒くしながらも、彼の瞳からは不敵で淫猥な光が洩れていた。私のからだの芯
に押し寄せるその光が陰部の源を突き抜け、臓腑を引き裂くと、爛れ出たものがじわりと体の
中に広がる。


ふと、あの頃の私の姿が脳裏に浮かび、ゆらゆらと揺れながらノガミの幻影と重なり始めてい
た。私の前に跪き、私の脚を舐め、私の内腿に接吻したノガミもまた私の鞭に悦楽の呻きをあ
げ、打ち震えた。鞭を振り下ろす私の空洞の中が研ぎ澄まされた弛緩を繰り返し、熱い痙攣と
なって高みへと昇りつめていったノガミとの遠い記憶…。


タツヤのからだに振り下ろす鞭の音だけが、私の中の森閑とした暗闇に木霊し、あの頃の私の
姿が色褪せながら闇に消えていく。そのとき誰かが、私の胸奥を氷のような冷たい手で鷲づか
みにする…。その手は私の陰部を鋭く貫き、子宮さえ抉り出しそうなくらい深く突き刺さった
のだった。私はその手を振り払おうともがき、喘ぎ、無我夢中でタツヤのからだに鞭を振り下
ろした。

ヒヒュンー、ビシシッ…

…あうっー、あぐぐーっ…


澱んだ空気の中で、微かに湿り気を帯びた鞭が、大きくしなりながら棘のようにタツヤの肌に
喰いつく。鞭の音とともにタツヤの裸体が烈しく撥ね、白い咽喉が小刻みに震えると、悶え狂
うような嗚咽が彼の唇から迸る。

ビシリッ… ビシッー うぐっ…あううっ… 

一本鞭がうねりながらタツヤの肌に浮遊する光を切り裂く。ふと気がつくと鞭の音と彼の嗚咽
だけが響く部屋の中は、私という存在が消し去られ、タツヤだけの沈黙の時間が刻まれていた
のだ。

鞭の痛みを噛みしめるタツヤの肉体は、自らの肌に赤い条痕が描かれることで、あたかも夢幻
の沈鬱な情念を浄化させようとしているかのようだった。


何かが違っていた…。あの頃、鞭を手にしていた頃の私と何かが違っていたのだ。 

タツヤの肉体は私自身を映し出す鏡なのだ。その虚ろな鏡面から放たれた不穏な光は、私自身
の肌に鋭く振り下ろされる鞭となって私を身悶えさせ、私の性を今にも解き放とうとしていた。
それは私にとって茫漠たる無為の悦楽となりながら、果てしない虚空の蒼穹へと私を導こうと
していたのだった…。


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