投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

冬桜
【SM 官能小説】

冬桜の最初へ 冬桜 10 冬桜 12 冬桜の最後へ

(第二章)-4

閉じた瞼の中で冬桜の花びらが、仄白い真珠のような輝きを滴らせている。
冬桜に埋もれた陰唇が、脅えたようにひび割れている。血流が息を荒くし、じわりと押し寄せ
る淫蕩の疼きが、私の性をゆがめていく。溢れる蜜液が絡み合う澱みに、タツヤの舌が深く沈
み込むと、私の中にとどまっていたものが飛沫をあげて空に舞い、肉の魔窟へと私を誘い込ん
でいく…。

私は何かを捨てようとし、何かを喘ぐように求めていた。それが何なのか、自分でもわからな
かった。脱け殻のようになった私の空洞の中にひしひしと押し寄せるものが、閉ざされた淫窟
に澱む蜜液の断片をかろうじて自分の性へつなぎとめようとしていた。

淫窟のなかで、蜜汁から変幻したものが、羽を広げ、囀り、襞に描かれた淫猥な疼きを啄む。
その嘴は深く淫蕩な薄笑いを浮かべ、私の陰部を包む草むらをまさぐり、肉の割れ目を執拗に
突いていた…。


翌日、私は、タツヤの携帯に電話をした…。



「谷 舞子様でいらっしゃいますね…お待ちしておりました。ノガミタツヤ様は、すでにご用
意させていただいていますよ…」
ホテルのフロントの白髪の痩せた老人が低い声で囁いた。

タツヤが私を誘った場所は、高級マンションが立ち並ぶ閑静な住宅街の一角にある小さなホテ
ルだった。タツヤを用意しているという老人の言葉が、私の中を甘やかにくすぐる。

「プレイ用の衣装にお着替えがお済になりましたら、プレイルームの方へご案内いたします。
お着替えは奥の特別室になります。それにしてもお綺麗な方だ。私もあなたのような方に鞭を
打たれたいものです…」と、老人は卑屈な笑みを浮かべながら、私のからだの輪郭に舐めるよ
うな視線を這わせた。


ホテル客の特別の会員ために用意されたSM用のプレイルームは、ホテルの地下にあった。
プレイ用の衣装に着替えを済ませた私を、老人がうっすらとしたオレンジ色の灯りの中に続く
長い螺旋階段へと導く。

「黒いボンデージがよくお似合いですね。とても素敵な女王様ですよ…」と、老人が皺の寄っ
た目を細めながら淫靡に囁く。

黒いガーターベルトとストッキング、高級感のある艶やかな黒革のボンデージ、踵の高いハイ
ヒールを装った私…すべてはタツヤが私のために用意したものだ。老人は、階段を降りた先に
ある鉄扉の前に私を案内すると、私だけを扉の前に残して去っていった。



私が重い扉を開き、部屋に入ったとき、全裸のタツヤはすでに高い天井の鉄管に付けられた滑
車から垂れ下がる鎖によって痛々しく吊るされていた。彼のしなやかな細い腕が頭の上部に
伸び切り、束ねられた手首に嵌められた革枷は垂れ下がる鎖につながれ、眩しいほど艶やかな
肌をした裸体は、細緻な足の爪先だけがわずかに床に触れていた。

淡い灯りに充たされた部屋は、重々しい煉瓦の壁に囲まれ、床には磨き上げられた象牙色の大
理石が貼られていた。壁に掛けられた幾種類もの鞭や縄、鉄檻や黒いレザーで包まれた三角木
馬、磔台、床に剥き出しに埋め込まれた白い便器…すべてが部屋の淡い灯りのなかに眠ったよ
うに溶け込んでいた。ただ、鎖に吊られたタツヤの蒼白い肉体だけが洋燈の光りを浴び、くっ
きりと浮かび上がっていた。


私に気がついたタツヤがうなだれた顔をあげ、気だるい視線を私に注ぎ、物憂げな嘲笑を投げ
かける。


冬桜の最初へ 冬桜 10 冬桜 12 冬桜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前