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冬桜
【SM 官能小説】

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(第二章)-3

私の肉襞がもどかしい弛緩を繰り返し、彼のペニスを求めている…。求めているというのに、
私の陰唇から洩れる吐息は、なぜか重苦しく醒め果てている。からだの窪みの深奥を切なげに
浮遊するもの…それは私の空洞が充たされることを明らかに妨げるものだった。


ノガミの硬いものが、じれったいほどの優しさを込めて私の中に挿入される。

…あっ…ああっ…

嗚咽を洩らしながらも、私のからだの何かが違っていた。ノガミの額が強ばり、下半身の動き
がしだいに烈しくなる。彼の腰の動きにあわせて腰を振るが、彼のものを含んでいるのに、含
んだものと私の肉襞は、からからと空廻りをしていた。そのとき、虚ろな雲をつかもうとする
かのようにノガミの体の中でもがく私を、ふとタツヤがどこかで嘲笑ったような気がした。


「別人みたいな舞子を抱いているようだ…」とノガミが小さくつぶやく。

私のからだを包み込むノガミの体液が、私の乳首に絡み、腹部の窪みに滲み、淫毛を潤ませて
いく。やがて彼の体液は、私の肌の上でゆっくりと粘りを含み始める。そして、その粘液は
底の見えない沼の奥深くに澱む物憂い灯りを孕んでいく。ふたりの性交は、どこまでも行きつ
く先が見えない闇が織りなす迷宮へと息苦しく堕ちていくばかりだった。

「私の体の奥が粉々になるくらい強く抱いて…もっと…そう、もっと強く刺して欲しいの…」

擦れ合うふたりの肉のあいだを這ってくるものが、いつのまにか尖った棘のような毒々しい光
へと変容していく。その鋭い光は、私の湿った肉襞に喰いつき、肉をえぐりながら膣穴を裂い
ていく。それは私とノガミのあいだを裂こうとさえしていような渇いた光だった。


ノガミの腰の動きとともにギシギシとベッドが軋み、互いの性器が烈しく狂い悶える。何時間
もこうしていれば私たちは、一心同体となって溶け合うことができるのだろうか…。ノガミを
愛している…愛そうともがいている私がいる…。いや、愛し過ぎる関係の先は、虚ろな暗闇な
のだ。その暗闇が私には怖かったのだ。

…あっ…、おうっ…

ノガミの首筋が、一瞬、強ばるようにのけ反ると、仄かな熱を含んだ液体がまるで膣洞の中に
漂い、驟雨に霞んだように私の肉襞に滲み入ってくる。そのとき、私は自分のからだの中に、
ふとタツヤが何かを囁いたような気がした。豊饒に充ちた透明な快楽へと誘い込もうとするタ
ツヤの言葉は、私を奥深い性の欺瞞へと突きおとしてくれる。

タツヤが欲しかった…。タツヤを感じることで、私は性の奈落へ堕ちていき、私の中を燦爛と
輝く懐かしい光で充たすことができるのだ。



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