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THANK YOU !! ver. distance love
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2



「相変わらず、お前音痴だな。発音は綺麗なのに」
「・・・拓斗・・。」

思ってもない登場に、瑞稀は驚いたがすぐに力を抜いた。
色々と言いたい言葉があるのに、まず口に出てきたのは、

「・・会いにいくって、言ったのに。」

苦笑の、言葉。だけど、溜息も一緒に出ればそれはただの文句と化す。
拓斗も負けじと返す。

「お前が遅いから迎えに来たんだろ?どこかに居るか探してホールに来たら変に音を外した賛美歌が聞こえてきたから。」
「変に音を外したは余計でしょ!しかも、相変わらずって酷くない?これでも音痴治ってきたんですけど?」
「どこが。変わってないだろ。英語の発音でごまかしてるだけじゃないのか?」
「なっ!ごまかしてないよ!大体、そう言う拓斗は歌上手いって自慢出来るの?」
「あぁ、瑞稀よりは上手いって自慢出来るな。」
「発音微妙だったじゃん!」
「お前は音外してたろ?」

ムキになって言い合いを続けていた二人だったが、しばらく静寂が訪れる。
二人して言いたい言葉が、伝えたい言葉があったはずなのに気がつけば学生の頃と変わらないやり取りをしていた。
・・最近では、瑞稀が一歩引いてしまっていたことで出来なかったやり取り。
じっと見つめ合って、逸らして、また見つめ合って。
それを幾分か繰り返した時、意を決した二人の口が同時に開いた。

「「ゴメン」」

俯き気味で、相手の顔を見れなかった二人は思わず顔を上げた。
今自分が聴いた言葉が本当かどうか知るために。しばらくそうしていたが、先に視線を落とした瑞稀から口を開いた。

「・・だから、その、心配ばっかりかけて、あんな言葉言わせて、ゴメンなさい」
「・・俺の方こそ、自分から甘えるのが苦手だって分かってたのに、あんな言葉言って、ゴメン」

本来なら言わないと決めていたゴメンの言葉が、やはり出てきた。それほど、自分はあんな言葉を言わせてしまった事を拓斗に謝りたかったのもあったし、申し訳なく思っていたんだと自覚する。
お互いの言葉で、再び静寂が訪れる。と、思った瞬間。

「ふふっ・・」
「ははっ・・」

二人していきなり笑い出した。
ひとしきり笑って、お互いの顔を見る。もう、これ以上の謝罪は要らない。
そう思える程、二人の表情は穏やかだった。

「もう、良いよな。あの言葉、撤回だから。」

拓斗が扉から体を離して舞台へと歩く。
瑞稀の立っている位置の真下まで歩いて、自分を見上げたタイミングで瑞稀は久しぶりに見せる笑顔で返す。

「・・うん。良いよ。」

その言葉が合図かのように、拓斗は自分の腕を上へ大きく広げた。
数歩後ろへ下がった瑞稀は助走をつけて、勢い良く舞台から飛び降りた。勿論落ちる先は拓斗の腕の中。
無事に抱きとめられた瑞稀は床に足を下ろさず、そのまま拓斗の首に腕を回してやっと触れられる温もりに嬉しさを隠さなかった。
一方の拓斗も、そのまま瑞稀を強く抱き締めた。

「瑞稀、お前本当に凄いよ。俺の好きな音だ、あのトランペットの音」
「本当!?」

抱きつく腕を緩めて、拓斗の顔を見る。いつもならその顔の近さに驚い、照れてすぐさま離れる瑞稀だが、欲しかった言葉を貰えて感極まっている為に気付かない。
そんな瑞稀に拓斗は照れくさくも嬉しそうに頷いた。

「でも、さ。」
「?」

逆接の言葉が出て、瑞稀は首を傾げた。
もしかして何か足りない部分があったのかと不安になったが、変わらず少し照れている顔をしている拓斗を見て、そうでは無いと悟った。

「俺、お前が自由に吹いているトランペットならどれも好きだと思う。」
「え・・」
「というか、正直言うとさ、あの時お前にお前の音好きだって言ったのは、泣かないで欲しかったから。勿論本音だけど。・・だから、俺の方が凄く嬉しかった。」
「・・あ・・そ、そうなんだ・・そっか・・」

確かにあの時泣いてたっけ・・自分。
記憶を辿っていくと、かすかに覚えがあった。都合の悪いところだけ忘れていくのが人間のいい脳だったりするが見事に瑞稀はその脳の持ち主。
泣いてた記憶を思い出し、恥ずかしくなった瑞稀はぶわっと顔が赤くなった。
と同時に今の体制と顔の近さを我に返って思い出して、思わず両手を拓斗の肩に置いて顔を隠す。
そんな反応を見た拓斗はクスっと笑った。

「何で今更隠すんだよ。別に恥ずかしくない記憶だろ?」
「そ、そういう風には出来ないの!!」
「何だそれ」

面白くなって笑う拓斗に対して、恥ずかしくなって暴れ始めた瑞稀を見て仕方なしに瑞稀を抱きしめる手を緩めた。
それに伴い、瑞稀は足を地につけてほっと一息つく。



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