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THANK YOU !! ver. distance love
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-1



誰も居なくなったホール。
相棒のトランペットケースを肩にかけ、私服に着替えた瑞稀が客席を歩きながら、視界に広がる景色を眺めていた。
先程まで自分が仲間たちと一緒に目の前に広がる大きな舞台で演奏をしていたなんて信じられない気持ちでいっぱいだった。それと同時に、帰りたいと思っていた舞台に帰れたことに嬉しくもあった。

瑞稀は、たった一人でこの場所にいる。
本当なら真っ先に行かなければならない場所があるのだが、その前にどうしても自分の舞台を振り返りたかった。
自分の中であの曲で満足した演奏をできたと思っている。最愛の人だけのことを考えて、吹き切った。自分が求めていた音を吹くことが出来たと思って、舞台を降りた。
・・勿論、それがあの人が好きな音かどうかは分からない。
それでも、自分の中では最高の演奏を届けられたと振り返ってみて思う。

仲間やボスにお願いをして、本来演奏する予定だった曲を変えてもらい、あの賛美歌をアレンジしてもらって曲目に入れた。
瑞稀が何を、誰に伝えたいのかが口に出さずとも分かっている仲間やボスは何も言わずにその願いを聞き入れた。
現に今も、瑞稀一人を残してホテルに帰っていった仲間たち。
仕方ないなと笑って、頭をぐしゃぐしゃにするまで撫で、頑張れよと応援して去った仲間に、瑞稀は涙が出そうになった。
これ以上の仲間は居ない。そう心に刻みつけた。

恵梨も、メールをくれた。とても素晴らしい演奏だったと。
やっと瑞稀らしいトランペットが聴けたね、と。
その言葉に瑞稀はそんなに情けないトランペットだったのかと文句を言いたくなったが、今振り返ってもそれは出来なかった。
もう一つ。チケットを渡してくれて有難うとお礼を言うと、気にしないでと軽い返事が返って来た。
さらにチケットを渡すに至るまでには秋乃や千晴が尽力したおかげだとも教えてくれた。
改めて、背中を支えてくれる親友たちの凄さを感じた。と、同時にここまで自分の為に助けてくれたことに申し訳なくもなった。
だけど、ゴメンと謝った暁には、

「謝るくらいなら最初からするな」

と言われるだろうから、ただお礼を言った。
それだけでは今回の騒動に対しては足りないから、あの曲を選んだとも言える。
・・・赦しと、感謝の賛美歌。アメージング・グレイス。


「・・・Amazing grace how sweet the sound
  That saved a wretch like me.
 I once was lost but now am found,
 Was blind but now I see・・」

気がつくと、瑞稀は舞台へと歩みを止めないまま歌っていた。決して上手いとは言えないが自分が大好きな、この曲を。

「'Twas grace that taught my heart to fear,
 And grace my fears relieved,
 How precious did that grace appear,
 The hour I first believed・・

  Through many dangers, toils and snares  
  I have already come.
 'Tis grace hath brought me safe thus far,
 And grace will lead me home.

  The Lord has promised good to me,
  His Word my hope secures;
  He will my shield and portion be
  As long as life endures

  Yes,when this heart and flesh shall fail,
  And mortal life shall cease,
  I shall possess within the vail,
  A life of joy and peace・・

  The earth shall soon dissolve like snow,
   The sun forbear to shine;
  But God, Who called me here below,
  Will be forever mine・・」


気がつくと、舞台の目の前に来ていた。
一列目の席にトランペットケースを下ろして、勢い良く舞台に上がる。
舞台を見やり、客席に向き直った。
大きく手を広げて、歌の続きを歌い始める。気分は、そうオペラ歌手のよう。

「 When we've been there ten thousand years,
 Bright shining as the sun,
 We've no less days to sing God's praise
 Than when we'd first begun・・」

歌い終わった時、会いたくなった。誰でもない、あの人に。
その為に、早くあの人の元へ行かなくては。
そう決意を新たにして、広げていた手を下ろして舞台から降りようと客席に向き直った時。

「 Amazing grace how sweet the sound
  That saved a wretch like me.」
「・・・!!」

自分のモノとは明らかに違う、少し低い歌声がホールに響いた。
聞こえた声の場所を探して辺りを見回して、やっと見つける。
ホールの、瑞稀が入ってきた扉とは反対の、つまり舞台に近い方の扉。半開きになったそこに、ずっと会いたかった人が立っていた。



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