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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第5章 教育-4

 「あのね、何でそんな虎穴に入らずんば虎児を得ずみたいなことを‥、ちょっと紫苑、あんたからも言ってやんな」
 頑として譲らぬあたしに業を煮やしてか、瀬里奈は紫苑に助け船を求める。昨日の会合のことは全部話してあるけど、紫苑が調査に消極的なことは明白だ。ところが、返事は意外なものだった。
 「‥私は、沙羅さんに賛成です」
 おずおずとした言い方だが、驚きの表情を浮かべたのは、瀬里奈だけでなくあたしもだった。
 「でも、調査を行うのはあくまで危険のない範囲です。決して会長には近づかず、単独では行動しないこと。それが守れないようなら、綾小路家の調査が終わるまで、どこかに身を潜めているべきですわ」
 どうやら学院から離れて実家に戻ったのが良かったみたいで、少し顔色の良くなった紫苑は、いつもの調子で釘を刺してくる。絶対反対してくると思っていたから、あたしには嬉しい反応だが、瀬里奈はいよいよ眉間にしわを寄せ、厳しい表情を作る。
 「やっぱり駄目、認めないよ。今度ばかりは本当に危ないんだから、無茶はさせらんない」
 「だったら瀬里奈も協力してよ、皆でやれば大丈夫だって」
 「私にはわかるんだよ、これ以上この件にかかわるとやばいって、だから‥」
 「もうっ!そんなに九条が怖いんなら、布団でも被って部屋で震えてなさいよ!」
 何を言っても反対しかしない瀬里奈に、ついにあたしは業を煮やした。いくら見た目がフランス人でも、こちとら中身は江戸っ子よ。いつまでもうじうじ言ってる奴なんて、相手してらんない! 
 そうと決まれば行動あるのみ。昨日のしおりんの時と同じく、一方的に啖呵を切ったあたしは部室を後にしようとする。後ろから怒ったような瀬里奈の声がかかるが、乱暴にドアを閉めてその声を断ちきった。
 何よ、瀬里奈ったら。こうなったらあたし一人でもやってやるんだから!
 頭に血の昇ったあたしは、ぶつぶつ文句を言いながら廊下をドスドス歩いていくが、良心はチクチクと痛んでいた。


 「紫苑、あんたいったいどういうつもり?」
 わからず屋の沙羅が叩きつけるようにドアを閉めて出て行った後、私は怒りの矛先を裏切り者へと転じた。てっきり味方をしてくれると思っていたのに、一体何を考えてるのよ。
 「瀬里奈さん、私これでも沙羅さんとは三年長く付き合っていますのよ」
 少し困ったような表情を浮かべるも、いつものおっとりした感じで彼女は答え、ちっとも悪びれた様子はなかった。
 「ああなった時の沙羅さんは、何を言っても聞いてくれません。むしろ言い分を聞いたうえで、条件を付けたほうが賢明と言うものですわ」
 「だからって、今の沙羅を野放しにしたら、どんな無茶するかわかったもんじゃないでしょ」


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