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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第5章 教育-16

 「何だよ、飲ませねえのかよ、もったいねえ」
 「‥いや、顔に引っかけてやろうと思ったんだが、思ったより良くて」
 狐顔は汚れた一物をインテリ眼鏡の顔にこすりつけると、疲れたようにソファに身を投げ出す。どら息子に指を入れられたままのインテリ眼鏡は、喘ぎ声を上げながら、床に這いつくばっていた。
 「なんだお前、フェラは上手なくせに責められるのは弱いんだな」
 「ひぅ‥、そんな、わた‥、ひゃんっ!」
 「ほら、見てみろ、もうこんなにトロトロじゃねえか」
 濡れそぼった指を顔の前でちらつかせ、どら息子は身悶えするインテリ眼鏡にのしかかる。男に組み敷かれ、天井を向いた彼女の顔には、日頃の無表情から想像もつかないほど、女らしい艶めかしさが浮かんでいた。
 「さぁて、今度はこっちがサービスしてやるよ」
 どら息子が彼女の身体を貪り始めると、切羽詰まった様な喘ぎ声が漏れ始める。その愛のない欲望だけの営みを、これ以上見るのは耐えられそうになかった。
 証拠映像はもう十分。下の連中が行為に没頭している今が逃げるチャンスだわ。インテリ眼鏡の甲高い悲鳴が漏れ聞こえる中、音を立てないよう方向転換して撤退することを決めた。
 ダクトの中を這い進みながら、あたしは慙愧の念でいっぱいだった。心のどこかで、事態の深刻さを把握しながらも、スクープをものにしたい気持ちがあったのかもしれない。確かに望んだとおり学院の秘密を突き止め、その決定的な証拠をビデオに収めることはできた。でも、こんなの報道できるわけないじゃない。自分の立身の為に、インテリ眼鏡の人生を台無しになんてできない。そんなことをしたら、瀬里奈を不幸にしたマスコミと何の変りもない。報道は都合の悪い真実を隠すものではないけれど、誰かを不幸にするためにあるものでもないはずだわ。
 もうスクープとか手柄にこだわるのはよそう。ここを出たらすぐしおりんに連絡して、一刻も早く綾小路家に解決をはかってもらおう。心の中でそう誓い、ようやく電源管理室へとたどり着く。だが点検口を開けた途端、身体が急に空を飛んだ。
 一瞬何が起こったかわからぬまま、あたしは床に投げ出されて、したたか腰を打ちつけてしまう。思わず悲鳴をあげちゃったけど、どうやらそんなことを気にしてる場合じゃなさそうね。あたしを引っ張り出した犯人は、出口のドアを背に再び向かってくるところだった。
 それが誰かはすぐに分かった。百八十センチを超える巨体に、短く刈りあげた髪といかめしい表情。声だけは今日一日ずっと聞いていたのだが、こうして相対するなど思いもよらぬことだった。彼の名は南雲隆介、現生徒会で庶務を務める男だ。でも今問題なのは、彼が何者かではなく、あたしが自分より三十センチも大きい巨人に襲われてるということだった。
 狭い部屋で唯一の退路を塞がれてる以上、逃げ場はない。かと言って、立ち向かってどうこうなる相手じゃないことは、いちいち試してみなくてもわかる。彼はあたしを捕まえようとするように、大きく手を開いて、じりじりと近づいてくる。ポケットから取り出したスタンガンを相手から見えないように隠し持ち、慎重に隙を窺う。彼はあたしがスタンガンを持ってることを知らない。だから、襲ってきた時を見計らって、電撃を加えれば逃げるチャンスはあるはずだ。


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