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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第4章 会合-12

 惜しむらくは、彼女達は学院のゴシップを期待していたのでしょうけど、ここ二年の間は過去に聞き及んでいたような派手なスキャンダルもなく、腕を振るう場面に恵まれていない。その彼女達が目の色変えて飛びつくからには、何らかのスクープを嗅ぎつけてのことかもしれない。
 「それに〜、女の子がエッチなビデオで男の子を誘ってるとか、学院に秘密のスタジオがあるとか面白い話も聞いたんですけど〜‥」
 聞き覚えのない内容に私は眉をひそめた。ビデオ?スタジオ?一体彼女は何の話をしているの?噂が勝手に独り歩きして、尾ひれがついたのかしら。それにしてはやけに具体的な内容ね。
 気になるのは彼女の真剣な眼差し。あれは好奇心からではなく、相手の反応を窺っているきらいがある。ネット以外でも、この噂は広がりを見せていると言うのかしら。
 「まさか、一体どこからそんなでたらめが。とんだお笑い草ですよ」
 今度こそ私は明確な不審を覚えた。引きつった笑顔で苦笑を浮かべる九条会長は、嘘をついているのが歴然だった。
 もしや学院の裏側で進行している陰謀とは、この売春の噂に関係したことなのだろうか。確かに学院に対して従順にされた生徒なら、売春行為に応じる可能性は否定できない。しかしいくらなんでも、そんなことの為に学院ぐるみでリスクを冒すだろうか。
 あるいは売春行為は氷山の一角で、何か別の目的があるのか。とにかく九条会長が陰謀に関っていることと、それが売春の噂絡みであることは間違いないようね。
 「綾小路先輩は売春倶楽部の噂をどうお考えなのですか?」
 それまで一言もしゃべらず、私を睨みつけていた大柄な女子が、突然口を開いたのはその時だった。ハスキーな声には、おし殺された怒りが込められており、まるっきり詰問口調である。
 彼女のことは知っている。スキャンダルによって認知された藤堂議員の私生児、確か名前は瀬里奈だったかしら。入学当初は周りと衝突を繰り返していた問題児だが、報道部に入ってからは大人しくなったと聞いている。
 その彼女が、何か恨みでもあるとばかりに私を睨みつけるのはいかなる理由からか。綾小路家の者である以上、いわれのない恨みを買うこともしばしばだが、もしかしたら彼女はあの事を知っているのかしら。
 「おい君、そんな噂はでたらめだと‥」
 「あんたは黙ってな、九条。見え透いた作り笑いを浮かべて気持ち悪いんだよ!」
 あまりに容赦のない暴言が、場の空気を凍りつかせる。橘沙羅はぎょっとしたように藤堂瀬里奈に向き直るが、私はその一瞬、九条会長の顔に浮かんだ表情を見た。それはプライドを傷つけられ、怒りと憎しみを称えた暴君のもの。そう、これが彼の本性なのね。
 だが私もまた、藤堂瀬里奈に疑いの眼差しを向けられていた。察するに、彼女達も何らかの疑惑を持ってこの会見に臨み、売春の噂に関る者を探していたのだろう。そしてその容疑者には、どういうわけだか私も入っているみたい。どうやら彼女達とは、九条会長のいないところで話を聞いてみる必要がありそうね。その前に、潔白を証明する必要がありそうだけど。
 「売春倶楽部に関する噂は、私も鳳学院裏事情で見たことしか知りません。ですが‥」


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