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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第3章 調査-17

 思い返してみると、確かに私のクラスでも風邪が原因で休む生徒がいた。大抵はこじらせることなく一日休むだけで戻ってくるので、それほど注意を払わなかったが、全校的なものとなると明らかにおかしい。そもそも風邪は流行性の疾患。クラスや寮で流行るならともかく、このような飛び飛びの罹患は考えにくい。更に詳しく見てみると、医務室に運び込まれる時間こそ違うものの、全員が全員とも約十二時間前後で退院。しかも与えられた薬はどれもPL剤千から千五百ミリグラム。ここ最近は二年生に罹患者が多いが、去年の冬頃から三年生が、そして去年の春から秋頃までは卒業した三年生に入院者が多い。
 はっと思い当たることがあって、私は去年の夏頃の記録を呼び出す。まさかと言う気持ちが強かったが、出てきた結果を見ると、やはりという気持ちに変わった。
 喫煙常習者だった卒業生の荻城信吾、遅刻の常習犯だった同じく卒業生の東山香里、ストーカーまがいの行為を繰り返していた同卒業生の小見川泰樹。彼等は去年の夏頃から態度を改め、校則に従順になりだしたが、いずれもその前に医務室で入院している。
 「これは‥一体どういうことなの?」
 我知らず呟いた言葉に応えはなく、代わりに頭を巡らせる。私が生徒会長として学院の運営に努めていた裏で、何か得体の知れない事態が進行していたことは認めざるを得まい。このあからさまに不自然な風邪の流行は、人為的なものと考えたほうが良いだろうか。いずれにせよ、何らかの理由で医務室に運びこまれ、入院中にPL剤なる薬物にて治療を受けた者は、学院に対して従順な思考を持つよう変貌している。
 これが何者かの意図によるものなら、目的は何だろう?
 状況だけ見れば今泉先生が怪しいが、彼女は大手病院を束ねる西園寺グループからの派遣医師。その背後に西園寺家の思惑が絡んでいるとなれば、違法な臨床試験の可能性もありうる。
 だが、それはあまりにも突飛な考えだ。そもそも西園寺グループの学園部門統括者、鳳学院現理事長を務める西園寺公康氏は、老獪な現実主義者ではあっても愚か者ではない。もし有力者の子弟が通う学院で薬物実験したことが発覚すれば、身の破滅になることぐらい察しがつこう。グループの独立した下部組織が独断で行っている可能性もあるが、リスキーなことには変わりない。
 西園寺グループを隠れ蓑に別の組織が行っている可能性も考えうるが、そうなると怪しいのは、他ならぬ綾小路グループとなる。国内で西園寺グループの行動や人事に干渉できるのは、我が家くらいなものであろう。あるいは、私の思いもよらぬ思惑が、全く予期せぬところから働いているのだろうか。
 だがどのような裏があるにせよ、気づいてしまった以上、この事態を究明せずにはいられない。引退したとはいえ生徒会長在職時に、このような不自然な事態に気付けなかったのは私の失態。鳳学院生徒会長は、自らが責任を持って立つと決めた最初の職務。たとえそれが身内の不祥事を暴くこととなろうとも、知らぬ顔して通ることはできない。何より薫の心を変えてしまったのが、何らかの陰謀によるものなら許すわけにはいかない。


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