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鳳学院の秘密
【学園物 官能小説】

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第1章 日常-8

 文化棟の五階、学院で一番高い所に位置する生徒会室からは、遠く古都の街並みを見渡すことができた。日が暮れるまで執務をこなし、学校運営を支えていた日々。たかが全校生徒三百六十名の小組織とお祖父様には笑われるかもしれないが、執行組織を指揮し、学院を運営する仕事は楽しかった。
 生徒会長に立候補したのは、学んできたリーダー論が、机上の空論ではないことを証明するため。むろん綾小路家の力が背後に及ぶことはわかっていたけど、現実に組織を運営する苦労を、肌身で味わいたかったのである。
 結果的に、鳳学院の歴史の中でも稀に見る治世と好評を得たが、第百二十七代生徒会は決して順調な滑り出しではなかった。
 就任早々、例年がそうであるように、特に上級生が生徒会の指示に従わず、様々な問題が起きかけた。綾小路家に面と向かって盾突く者はいなかったが、それは隠れて校則違反を起こす者を増やしただけで、取り締まりを一層困難なものにしていた。
 民意を操るのが綾小路の帝王学だが、それでは個性が育たない。私は学院の建学の精神を尊重し、個性育成に重きを置くため、敢えて自由な校風を作ることに努めた。その為、時代がかった校則の改正に乗り出し、学院での生活環境を改善。また目安箱の設置など、問題の早期発見・解決に取り組んだ。環境が整うと軽度の校則違反は減少に向かったが、風紀を甘くした分、反体制的な生徒の校則違反が増長することを懸念した。だが、問題は不自然なまでに起きなかった。
 むしろ、それまで校則違反の常習犯だった生徒が、生徒会に恭順する態度を見せ始め、協力的と言えるまでになった。この豹変とも言える態度の裏に、私は綾小路家の圧力が及んだことを疑った。権力の使い方に長けたお祖父様なら、そのくらいの根回しはやりかねない。
 しかし、何人かの生徒にその件を問いただしてみたが、何かを強制された雰囲気が全くと言っていいほどなかった。ただ、どこか画一的な反応で、まるで個性が欠落したように見えたのが印象に残っている。
 他の生徒会活動は、努力に応じた成果と自負しているが、この件だけは今も不信感が拭いきれない。結局私の風紀対策は、問題児と呼ばれる生徒達の個性を潰してしまったのか、それとも綾小路家の圧力のもと、見せかけの成功を収めたにすぎないのかしら。
 「‥‥です‥て!」
 どこか遠くから聞こえてくる苛立たしげな声が、私を物思いから引き戻す。
嫌だわ、いつの間にかネガティブな思想にとらわれていたみたい。せっかく愛読書を読んで、良い気分に浸っていたのが台無しだわ。
 嘆息しつつも、そろそろ部屋に戻ろうと帰り支度を始める。それにしても、ロビーの方から聞こえてくる騒ぎは何かしら?



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