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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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垣間見える過去-16

あたしは久留米さんに深々と頭を下げてから、


「じゃあ、今日の所はごちそうになります!

今度はあたしに奢らせて下さいね、それじゃあ!」


と、ニッと笑ってから彼に背を向けた。


ほろ酔い気分で上機嫌になったあたしは、カツッとサンダルのヒールを鳴らして一歩前に踏み出そうとした。


……が、突然。



あたしの左手首を大きな手がガッと掴んだもんだから、よろめいてバランスを崩しそうになった。


同時に、全身に電気が走ったように痺れたような気がした。


驚いて後ろを振り返れば、彼の真剣な顔が目の前にあった。


そんな顔にドキッとしつつ、


「な、何ですか?」


と訊ねた。


一気に火照り出す顔を見られたくなくて少し俯き加減になりながらも、その後彼の発する言葉をほんの少し期待なんかしたりして。


しかし彼の口から出たのは、


「タクシー使わないの?」


と言う、どうでもいい質問。


質問の意図がわからず、あたしは小首を傾げながらも


「ああ、近いから歩いて帰るつもりです」


とだけ答えた。





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