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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの世界-15

「どうしたの?」


顔だけ振り返ってこちらを不思議そうに見る彼に、一人体温が上昇していく。


いくらこのまま帰したくなかったとは言え、なんで引き留めるような真似をしちゃったんだろう。


引き留めたからには、なんとか話題を出さないと。


あたしは彼の持つカゴの中身を見てから、


「あ、あの、ビール好きなんですか?」


と、どうでもいいことを訊ねてから、ひねりのない質問をしてしまったと、すぐさま後悔する。


好きだから買うに決まってんじゃん、あたしのばか!


しかし、久留米さんは至って普通の顔で、


「うん、好きだよ」


と答えてくれた。


でも、それだけ。


“宗川さんはビールあまり飲まないの?”とか、“普段は飲んだりするの?”とか、話を広げようとすればいくらでも広げられるのに、彼はそのまま黙っているだけだった。


もう、この人はなんでこんなに素っ気ないの!


気まずい沈黙と、あまりにあたしに対して興味を持ってくれないことに苛立ってしまったあたしは、今度は彼の腕をむんずと掴み、


「……だったらこれから一緒に飲みに行きませんか?」


と、半ばヤケクソ気味に言ってしまった。





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