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THANK YOU !! ver. distance love
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-3



時差はあるが、時は同じくして・・日本。

拓斗は竹刀と剣道着の入った袋を担ぎ直して歩き始めた。
数時間前のことを思い出しては、すぐ近くのフェンスに勢いのまま拳をぶつけていた。

数日前。
瑞稀に電話でこちらも感情高ぶるままに別れの言葉を吐いて、なにも言ってくれないことに余計に腹を立てて電話を切った。
まさか自分から瑞稀を傷つけることを言うとは思わなかった。多分、今までの不安が溜まっていたのかもしれない。

瑞稀が、後にどう思っているのかわからない。想像もしたくない。
どうして別れを言われたのか分かっていないだろうか。それとも、大変な状況なのにも関わらず気遣ってくれない恋人に呆れただろうか。
いや、それだけならまだ良い。本当に、瑞稀も嫌気を差していたら・・そう考えれば考えるほど、拓斗の心を苦しめる。

だけど、自分から連絡を取る気はなかった。
瑞稀は、ずっと大切なことを言ってくれなかった。何かあったら、自分に話して欲しいと言ったのにも関わらず、倒れたことも無茶していたことも何もかも言ってくれなかった。
今回ばかりは、自分がどれほど辛い思いを味わったか、どれほどの期間不安になったか、知らしめてやりたかった。

「・・瑞稀が、なにも言ってくれないから」

誰に言うわけでもなく小さく呟いた言葉は、まるで自分の黒い感情をかばっているようで気持ちが悪かった。
綺麗なまでの淡い夕焼けに、なんとなく顔が上げられずに歩いていると女物の靴が二人分、自分の視界に映りこんだ。
誘われるままに、顔を上げるとそこには久々に見る懐かしい二人。

「・・柊に、木ノ瀬・・?」

髪を以前よりも伸ばしている、瑞稀の親友で自分の親友でもある柊秋乃。それから、逆に小学生の時よりもショートになった、瑞稀の幼馴染みである木ノ瀬千晴。
顔しか覚えていない拓斗には、二人の認識の違いはこれくらい。
なんてバカな事を考えていると、秋乃が口を開いた。

「・・随分情けない顔してんね。ま、試合も情けなかったけど」
「なんだと」
「世界大会で2位になったヤツが地域の市民大会に予選落ち?情けないんじゃない?」
「柊、てめえ!!」

学生の頃も、ストレートにモノを言われたが大人になってもそれは変わらない秋乃は拓斗が今も気にしていることを直球でぶつける。
そのことに拓斗が怒らない訳が無く、思わず秋乃に殴りかかろうとしたが千晴に間に入られて止める事を余儀なくされる。

拓斗は舌打ちをして、気持ちを落ち着かせる。
確かに数時間前、瑞稀に対して黒い感情を持っていて気持ちが落ち着かなかった為に、気まぐれで飛び入り参加した市民大会の予選でまさかの一本負けをしたのだ。
気持ちが落ち着くどころか、ますます荒れる羽目になり、どうしようかと考えていた時に秋乃たちに捕まった。
これ以上関わると、瑞稀のことで何かしら言われる可能性が高いと今までの経験上わかっていることだから二人の横を通り過ぎようとした。

「ウチも、何にも知らないけどねー」

すれ違ったところで、千晴から声がかかった。果たしてそれは自分に対して言われた言葉だったのかわからないが、思わず正直な身体が反応して足を止めてしまった。
ゆっくり、振り返ると千晴が真っ直ぐ拓斗の目を見つめていた。秋乃は、少し反省しているのかバツの悪そうな顔でそっぽを向いている。

「ウチだって、何にも聞いてないから、なにも分からない」
「・・・」

何が、なんて聞かない。たった一つしかないから。
そういえば、木ノ瀬がマンガから口調を引用していないのを初めて聞く気がする。
だから新鮮で、こんなに胸を打つのかとどこか他人ごとのように考えている自分がいた。

「瑞稀は、昔からそう。いつも人のことばっか。」
「・・・」
「だから、キミと付き合い始めたって聞いた時とか、アメリカ行くって聞いた時は凄く嬉しかった。やっと自分の事を考えてくれたんだって」
「・・・・」
「でも、やっぱり連絡無いし。何がどうなってるのかも分からない」

悲しそうに目を伏せた千晴に、ああ・・本当なんだなと思う反面、数日前の自分を重ね合わせた。それが、ひどく物寂しくて、余計に千晴が痛々しく思えた。

「でも。」

同情しかけていると、千晴の強い声が否定の単語を発した。あの時自分には持ち合わせていなかっただろう強い声と単語。

「今、キミに会いに来たのは瑞稀の為。なにも知らないけど、大切な瑞稀の為なら、なんだってしたいから」

拓斗の思考が、止まった。
一見、自分に向けられた言葉のようでいて、それは全く別の相手に向けられた特別な思いの言葉。ここまで言い切ってしまう千晴に凄いと関心しつつ、やはり自分と重ね合わせられなかった。
どうしても、別れを切り出した自分を責められているような気がして。

「でも、アイツはなにも言ってくれなかった。恋人である、俺にだって!」
「・・・」

いつか、前にもう一人の瑞稀の親友と似たような会話をした気がする。
あの時も自分は瑞稀のなにも知らなくて、こうして駄々をこねていたと思う。そうか、自分は二回目だから、こんなに許せないでいるのか。と内心で納得する。と同時に、二回も同じ状況になっていることに少し情けなく思う。
あれから、自分は進化していないと言われているようで。



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