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THANK YOU !! ver. distance love
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-2


『・・・・・言葉』

今回、一番自分に足りなかったモノを探し、答える。またも、エンディから溜息が漏れた。間違っているのかと思ったが、そうでもないようだ。

『わかってるんじゃない。今回、瑞稀に足りなかったモノ』
「・・・」

瑞稀はただ黙ったまま、エンディを見つめる。

『今回、瑞稀は言葉にしなかった。何が起きたかさえ、言葉にしなかった。嫌がった。
それで、ボーイフレンドが安心すると思う?』

今までを振り返って、一つ一つの出来事を思い出して瑞稀はふるふると首を横に振った。

『それにね、ミズキ。アンタはカッコつけすぎよ』
「え?」

拓斗に罪悪感を感じていて、ふと聞こえてきたエンディの言葉に思わず聞き返した。

『正確には・・頑張りすぎよ。』
『・・頑張りすぎ?』
『そう。世界で活躍をし始めたボーイフレンドに追いつこうって、何から何まで完璧を求めすぎてる。それで、一つ上手くいかなくなると全てが上手くいかない。』
『・・・それは・・』
『ずっと大好きなことを小さくコツコツやっていく人と、いきなりすべてを完璧にしようとして全て失敗してしまった人。どちらも同じ人だけど・・どっちが情けないかしら?』
「・・・」

“情けない。”
以前自分が使った言葉。拓斗の恋人でいるのに、今の自分は釣り合わなくて、恋人と呼べるわけがないし、情けない。そう思っていた。
でも結局追いつこうとして無理して、失敗して、結局追いつこうと目標にしていた何よりも大切な人を傷つけて、失ってしまった。

『人は欲張りよ。そして恋はもっと人を欲張りにする。今回、ミズキは、主席演奏者。恋人。恋人との対等な位置関係。少ない言葉での気持ち共有。それらを一気に望んだ。』
「・・・」
『勿論、抱えるモノは増えて当たり前。人は元々欲張りな生き物で、人生という輪の中でいくつもの大切なモノが増えていく。そこで問題はどう守っていくかなのよ。』
「・・・・」
『だけどね、アンタはそれらの守り方を間違えた。一人で全て抱え込むっていう守り方を選んで、無理をして、頑張らなくていいのに良い自分を見せようと意地を張った。』
「・・・」
『それが、ミズキの大きな失敗。アンタがちゃんと向かい合わなきゃいけない、失敗。』

エンディの、いつも以上に真剣で真っ直ぐな言葉に、瑞稀は真っ直ぐ目を見つめる。言葉は全て的確で、何もかも見透かしたような物言い。エンディには、敵わないと思った。久々に。

『相手に気持ちを伝える為に言葉はあるの。アンタは言葉を伝えなかった。それで全て伝わると思う?』
『・・思わない。』
『なら、どうするの?確かに言葉は気持ちを伝える為にあるわ。でも結局、道具に過ぎない。言葉を、気持ちを伝えるには、どうしたらいい?』

‐そんなの、決まってる。
瑞稀は、エンディの顔を真っ直ぐ見つめて、トランペットを胸の前まで持ってきた。

『行動する。私は、今度こそトランペットも、拓斗も抱えていく。』

今までにはない、瑞稀の強い意志が込められた目にエンディは再びため息を着いた。
でもそれは、先程までとは違って、安堵によるもの。
エンディの笑顔に、瑞稀は微笑むとトランペットを抱えたまま自主練室を飛び出した。
向かう先は、今ホールでオーケストラ全体で合わせ練習をしているホール。
扉を勢い良く開け、真っ直ぐに最前列に座って練習を眺めているボスの横に歩み寄る。舞台上に居る仲間が驚いている中、瑞稀はさらに驚いたことに、ボスに向かって頭を下げた。

『お願いします!次の日本でのコンサート、私もメンバーに入れてください!!』


仲間が更に驚いている中で、ただ一人、静かに瑞稀へ視線を送るボス。

『・・キミには、失望したと言ったはずだが』
『失望だろうが絶望だろうが関係ありません!』

ボスの低い声に、瑞稀は頭を勢い良く上げて言い放った。
ますます驚き・・騒ぎ始める仲間たちを尻目に、瑞稀はさらに言った。

『私は、たった一人の大切な人を、今度こそ守っていくと伝えたい!勿論トランペットも!それを、聞いてもらいたい!言葉だけじゃない、あの人が好きだと言ってくれたトランペットの音でも!』
『・・・』
『ありのままの自分の、飾らない音を聞かせたい!!』
『・・・』
『お願いします!!』

もう一度、深く頭を下げる。
世の中が甘くないことは良く知っている。それでも、頭を下げてまででもお願いするしか方法が無かった。
ボスがなにも言わずにすっと立ち上がるのを見て、瑞稀はギュッと目をつぶった。

「(やっぱり・・だめ・・!?)」

涙がこみ上げそうになった瞬間、頭にポンと手が乗せられたのが分かった。
思わず身体を起こし、ボスを見る。ボスの顔は、やれやれと仕方なさそうな顔をしているにも関わらず、どこか嬉しそうに見えた。

『・・遅い、言ってくるのが。』
「・・へ?」

意味が分からず、ただボケっとしていると、ボスが舞台上に居る仲間に向き直った。
そして、大きな声で、

『メンバー追加!!トランペットに、ミズキ・ヤガミ!!』
「!!」

思わず、ボスを見ると得意げな顔をしている。舞台上の仲間たちにも視線を送ると、まるで最初から分かっていたような顔ぶれ。
瑞稀はそれを、恨めしく思いながらも照れくさそうに笑った。

「・・ほんと、人をなんだと思ってんだか・・」



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