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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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少しだけ、揺れる-8

彼がこんな風にジイッとあたしの手元を見ていたことが意外な気がして、思わず眉をしかめた。


普段、他人のことに興味ないくせに何をジロジロ見てるんだか。


煙草の灰をトンと落としてから、あたしはしかめっ面のまま、久留米さんに向かって、


「……何ですか?」


と、やや低めの声を出し、不機嫌そうに訊ねてやった。


すると彼は謝るわけでもなく、ただボソッと、


「『モナリザ』のライターは止めたんだ」


と呟いた。


なっ!


あたしは思わず目と口を大きく開けてしまったもんだから、危うくくわえていた煙草をポロッと落としそうになった。


慌てて久留米さんを見れば、彼の口元は笑いをこらえているかのように少しだけ口角が上がっていた。


ま、まずい……。とにかく何でもいいから言い訳しないと!


あたしは咄嗟にこないだ久留米さんに『モナリザ』のライターを拾ってもらった時に、心の中で浮かべた理由を思い出した。


「あ、あれは友達が彼氏とそこ行った時に持ち帰ったのをもらっただけです……」


まさか久留米さんがあのライターのことを覚えているとは思わなかったし、こんな風に話しかけられるとは思わなかったから、しどろもどろになってしまった。



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