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野生の悪魔が現れたっ
【ファンタジー 官能小説】

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白銀の翼-5

「俺を抹殺……?」
「ああ。いつクランに浸食されるか分からないからな。元を絶てないのであれば、末端だけでも切り捨てておかねばなるまい」

 生きるか死ぬか。いや、死ぬか殺すか、だろうか。アリアが突き付ける選択肢はどちらも冷たい。
 とても冗談を言っているような目ではなかった。何処からともなく出現させた大剣も、オモチャということはないだろう。いつ刃の錆にされても不思議ではない緊張感が張り詰めており、修一は微動だにできなかった。
 しかし彼の後ろにいる影は、すう、と彼をすり抜けていった。

「澪!? 何やってんだ!?」
「案ずるな」

 アリアは柄に左手を寄せ、腰を絞る。

「やめろ!」

 アリアの前に長い輝線が引かれた。横薙ぎに振られた刀身が澪の胴を抜けていた。しかし澪は、何事もなかったかのようにドアの方へ足を進めていく。

「こちらから現世の魂に触れることはできない。まあ、現世からはこちらの姿すら見えないのだがな。そもそも、貴様がこちらにいることが異例中の異例なのだ。例え魔力を宿していようとも、現世の魂をチューニングすることはない」
「チューニング?」
「現世の魂をこちらに引き込むことだ。本来、現世に潜伏する天魔族に施すものなのだが、今回はやむを得まい」

 アリアは姿勢を戻し、剣を右下に振り下ろした。しかし蒼い瞳は澪の姿を追い続けている。

「……澪には悪いことをしたな」
「え?」

 澪がドアの向こうに姿を消し、アリアはようやく修一を捉えた。

「貴様がここにいるということは、澪の前から姿を消したということだ」
「あ……向こうからは見えないのか」
「ああ。本来ならば現世に影響を与えないように配慮するのだが、今回は常とは違う。それほど重大な問題なのだ」

 そう言うと、アリアは蒼眼に冷酷を灯す。

「さあ、もういいだろう。クランの居場所を教えろ。そうしなければ、私は貴様を斬らなければならない。しばらく依り代の糧を失うことになるが」

 修一を再び緊張感が飲む。出会ってから数える程度の時しか重ねていないのだが、クランを失うのは心苦しい。それほどまでにクランの存在が、勿論ミルルの存在も、彼の日常に溶け込んでいる。
 けれども死ぬというのも受け入れがたい。異能を駆使してクラスハーレムを手に入れ、これからだというところなのに。それにまだやり残していることが、少なくとも一つある。

「……少し考えさせてくれないか」
「いいだろう」

 意外にあっさりと受け入れたアリアに、修一は拍子抜けしそうになった。

「明日、決心が付いたらここに来い。日が沈んでも現れなければこちらから出向こう。貴様の住みかは分かっている」

 大剣が蒼い光に包まれ、霧散した。

「一つ言っておこう。貴様がどう答えても、必ずクランは抹殺する」

 どちらを選んだ方がいいのか分かるだろう? という物言いだ。修一に時間を与えたのは、それに気付かせるためなのかもしれない。彼女としても、無闇に探し回るより居場所が分かった方が楽であろうから。

「いい答えを待っている」

 踵を返したアリアの姿が、修一の瞳から消えた。
 街に降る柔らかな日差し。高い位置に向かう太陽は蒼天に浮かんでいる。


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