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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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トラブルの果てに-15

「大変ご迷惑おかけして申し訳ないのですが、住基ネットを扱える者が先ほどまで会議に出払っておりまして、急いでこちらに向かっているとのことなんです。

お客様にはお待たせしてしまって大変申し訳ないのですが、少々お時間いただいてよろしいでしょうか」


こういう時、男の人が頭を下げるだけで、この年代の人達はあっさり納得することが多い。


それと同時に、社会の中の若い女がどれだけ甘く見られていたかを痛感した。


そしてその例に漏れずご夫婦は、


「会議なら仕方ないね、少し時間を置いてまた来ます」


と拍子抜けするほどあっさり納得し、その場を去っていった。


遠くなっていくご夫婦の背中に、安堵のため息を吐く。


それと同時に、住基ネットを取り扱える職員が、昼休みだから食事に出掛けていると言おうとしていた自分に恥ずかしさがこみ上げてきた。


昨今は公務員に対する目ってのは厳しさを増しているし、あたしがバカ正直に言っていたら、きっと心証を悪くしてしまっていたに違いない。


嘘も方便、うまいごまかし方で切り抜けてくれた久留米さんは、極めて大人な対応をしてくれた。


あたしは、黙って自分のデスクに向かおうとする久留米さんに向かって、


「あの……ありがとうございました」


とボソボソ小さい声で頭を下げた。


大人な久留米さんに対し、未熟なガキの自分が恥ずかしくなって、まともに彼の顔が見れなかった。


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