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煌めきのした
【OL/お姉さん 官能小説】

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煌めきのした-1

コピー機から飛び出してくる紙面になにげなく目を落としながら、心が空っぽになるのをおぼえる。

地域別普及率の比較と概要について・・・

またなにやら同じような事について長々と話し合うらしい。
とはいえ、私がその会議に出席するわけではないのだからどうでも良い事なのだけど、こうして同じ文面が出てくるところを見ていると中学生のときに男子が教科書の片隅に書いていたアニメーションを思い出す。

アニメーションは動くけどコピーは動かない。
まるで退屈な毎日を何百日も平穏に繰り返すみたいな動作のように、私には思えてしまう。
そういえば今日は昨日と違う日。「あとですればいいか」が滞ってまた遅くならないように早い段階で仕事をかたずけないと・・・



待ち合わせの店内には今風のアレンジをされた和楽器の音色とそれに似つかわしい若者であふれていた。
道玄坂は昔、山賊の棲家だったと誰かが言っていたけど、そのほど目立たない一角にこんな和食の店があるなんて以前なら私の知る由もなかっただろうとつくづく思ったりする。
粗い土壁からは燻した色の竹材が肌を覗かせ、和紙を通した間接照明はほんのりと薄暗い。
きっと山賊たちもこんな雰囲気の中で食事をしていたのかも知れない。

席は身の丈が隠れる程度の仕切りにテーブルごとに切り分けられていて、ちょうど個室のようになっている。
その低い壁も黒っぽい竹で編み込まれていて、よく見ればありふれたラタンの衝立である。
これはおそらく、お店の装飾に合わせて作ったものではなくラテン調の衝立をお店に合わさせたものだろう。
異様の物をすこしずつ歪めて組み合わせていけば、雰囲気に溶け込んで違和感を感じさせないものなのだ。
私たちの息づく社会も実はこんなもののようなのかも知れない。

「遅くなったね、悪い悪い・・・」

ほんのりと桜の香りがするお茶が体温と同じぐらいの温度になった頃に彼が現れた。
このお店にも慣れないうちはこんな時間も長く持て余したものだったけど、私もいつしか解け込んで隣の席の客の様子を聞くともなしに暇をつぶしていた。
学生だか、あるいはその同級生だかの若い男子ふたりに女の子がひとり・・・片方はしきりにアプローチをかけてもう片方の男子。
自分のスキルが対抗するに及ばないのか、さりげなくその妨害に徹している。
この三人がどういう間柄なのかは知らないけれど、私はおそらく姑息な男子の方が彼女を射止めるように思う。
どちらが比較的ハンサムボーイなのか顔をみてみたいものだ。

彼が到着すれば私たちは他愛ない会話を交わしながら天婦羅定食をたいらげて、その後はホテルに向かう。
何百日繰り返す昨日とは違う今日ではあるのだけれど、この日を数えるとこれもコピーされた日々にあまり変わりはないのだった。


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