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天神様は恋も占う?
【青春 恋愛小説】

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桜時の誘惑-3

梓のサラサラな髪に桜。謀られたようにヘアピンの所についている。あまりにもマッチしているそれを、俺は取らなかった。春らしくていいなぁ、なんて思ったりした。
「ん、純一……」
やっと目を覚ました。何とか予鈴3分前に自然起床してくれた。
「あれ……? 私、寝てた?」
「うん、しっかりと」
「ゴメンね、起こすとか言ってたのに」
「気にしないこと。それよりさ、ホラ」
俺はさっきの花びらを梓に見せる。
「あれ、ついてた?」
「ちょうどヘアピンのとこにな」
すると梓はニッコリと笑った。
「じゃあピンに挟んじゃお!」
言うが早いか、梓はヘアピンに春の装いをする。
「どう?」
そう言ってクルリと一回転してみせる梓。
「うん、春って感じ。ホラもうすぐ休み時間終わるぞ」
俺は弁当の包みを持ってベンチを立つ。その時やっと気付いた。もっと早く気付くべきだったのだ。
──屋上の視線の大半が俺たちに向けられていたことに。
今のやりとりはともかく、二人肩を貸しあって眠っていたところも見られていたのか? そう思うと少し恥ずかしい。
「ねぇ純一、何か私たち注目されてない?」
梓も気付いたようだ。そう言って梓の顔は見る見る内に紅く色付いてきた。俺と同じことを考えたのだろうか。
「別に良いじゃない」
2人して恥ずかしがっても意味が無い、紅くなる梓を見てそう思い言ってみた。
「でも……」
さらに真っ赤になる梓。桜も驚くほどの色付き様だ。滅多に恥ずかしがったりしないのだが、一度照れるととことんまで紅くなるのは昔から変わらない。
「気にすることないって。誰にも迷惑はかけてないしさ」
とりあえず立ち尽くす梓を再びベンチに座らせ、俺も隣に腰を下ろす。ホントのところ俺も恥ずかしいが、梓がこの状態ではフォローする他ない。
梓の顔の紅さが取れたのは予鈴が鳴るのとほぼ同時だった。


「落ち着いたか?」
「うん、何とかね」
予鈴前にほとんどの生徒が下へ降りたため、今は人影はまばらだ。
「あ〜あ、それにしても恥ずかしかったぁ!」
それはこっちの台詞だ、と言いたかったが我慢。
「─でも純一の言う通りだね、恥ずかしがっても意味ないもんね」
「だろ? 俺たちは俺たちなんだからな」
「よおし! そうとなれば!」
急に立ち上がる梓。何だろうと思う間も無く俺の腕を抱えこみ駆け出す。俺は引っ張られていくことになる。さっきと違い辛うじて弁当箱は残留することは無かったが。
「ちょっと待てって、流石にこれは恥ず……」
「何言ってんの、恥ずかしがっても意味無いって言ったのは純一でしょ? ホラ、早くしないと授業に間に合わないよ!」
俺に皆まで言わせず悪戯っぽい笑みを浮かべる梓。何か、負けた感じがした。
桜の下を通り過ぎる時、風が強まり枝のざわめきが一層大きくなった。
──『ずっと仲良くしなさいよ』、俺にはそんな励ましの声に聞こえた。



それからというもの、梓は、廊下でもどこでも俺の腕に抱きついたり、弁当を食べるときには『あ〜ん』をしてきたり、とこっちが真っ赤になってしまうような行動を平気でするようになった。
桜は今日も、そんな俺たち生徒を見守ってくれている。その暖かな眼差しで──。


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