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想いを言葉にかえられなくても
【学園物 官能小説】

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想いを言葉にかえられなくても《トロイメライ》-5

「でも、良かったよね」
「え?」
 不意に耳元で夏海が言う。
「保体は2クラス合同でさ。恭介君の事、こうやって見れるんだし。」
「まぁね。確かにクラス違うから…こう言うのは嬉しいかも。」
 視線の先のキョースケが揺れる。
「あんまり嬉しそうじゃないよ〜?」
「そんな事無いって。ほら、早く準備体操しないと天野にセクハラされちゃうぞ!」
 夢、見たからかな。聖が背後で見てる様な……罪悪感?
 今更不安になる。……あたしはキョースケが…好きなんだ……よね?


………………
 幼いあたし達は、一回身体を合わせたら後は雪崩の様だった。頭の固い大人同士だったら、きっと「一度きりの過ち」なんて格好つけて疎遠になるんだろうけど。あたし達は子どもだったから。
 小学校を卒業して、暇で仕方なかった春休み。親が仕事で居ないのを良い事に、体力の尽きるまで身体を合わせあった。
 お互い、好きとか愛してるなんて言わなかった。だって、ずっと一緒で…これがLIKEなのかLOVEなのか分かろうともしなかったから。ただ、お互いの体温を共有して、快楽を求めるだけで正直、精一杯だった。そのくらい幼かったんだ…。

 中学校に上がると妙に男女が意識し合う「思春期」になった。だから二人っきりなんて…周囲の目もあるし。そんな風に意識してしまったあたしは聖を避ける様になった。
 だけど、避け続けたのも一ヵ月で幕を閉じた。当時も吹奏楽部だったあたしの帰りを、バスケ部だった聖が待っていた。
 昇降口で下足入れに寄り掛かり、黙って突っ立っていた。それを見たら胸が痛くなって、涙が出そうになったのを覚えてる。何も言わずに避けてしまった事が…たった一ヵ月の事なのに……。
「せ、聖…」
「教会で待ってる」 
 投げ付ける様に言った言葉が胸に突き刺さる。
 幼い頃、二人きりになりたい時に通っていた教会。廃墟になりつつ在るけど、中はそんなにくたびれてはいない。そんな秘密の場所…

 …ッギイィィィ…
「聖…?」
 辺りは暗くて目が慣れるまで真っ暗だった。別名「お化け屋敷」だからちょっと怖い。
 扉をゆっくり押して中に入ると、ステンドグラスから月明りが差し込んでやけに明るい。その中央、十字架の下にいた……学生服が眩しかった。
「なんで無視すんの?」
「……」
「もう嫌になった?俺とは…」
「違うッ…あたし、あたし…聖…」
 言葉にならなかった。こんな気持ちを知らないし、どうやって言葉にしたら良いか解らなかった。だから……
「苺、俺は……」
「聖、せ…セックスしよ…?」
「苺…?」
「あたし馬鹿だから…解んないよ………だけど、聖とはずっと…ずっと」
 ぎゅううぅって抱き締められて涙がこぼれた。あたしは馬鹿だったって気付いたから。今思えば不器用で幼いから、身体が繋がるしか方法が無かったんだ……。
「ごめん…ごめんなさい。聖…ごめん」
「もういい…いいから…」
 紡ぐ言葉の代わりに深い、深いキス。いつものキスじゃ足りなくて初めて舌が絡まった…夢中でお互いを感じあった。……そのまま、十字架の下で何度も身体を合わせあった…。この幸せは永遠に続く筈だった。ううん…そう思ってた。だけど現実は甘くなかった。


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