投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

大陸各地の小さな話
【ファンタジー その他小説】

大陸各地の小さな話の最初へ 大陸各地の小さな話 59 大陸各地の小さな話 61 大陸各地の小さな話の最後へ

温泉休暇の大騒動-14

***

 大騒動の夜も更け、誰もが寝静まった深夜。
 ギルベルトは浄化魔法を使い、情事に疲れ果て眠ってしまったエメリナの身体を清めた。ぐったりした手足を取って、浴衣を着せてやる。

「ん……」

 布団をかけようとしたところで、エメリナが小さく呻き、寝返りをうった。
 実のところ彼女は、あまり寝相の良いほうではない。
 大きく足を動かした拍子に浴衣の裾がはだけ、太もも近くまで露になる。着せ方が甘かったのか、胸元の合わせ目も少しだけ開いてしまった。

「っ……」

 扇情的な姿に、ギルベルトは小さく息を飲んだ。
 白い肌には、自分がつけた鬱血の痕がまだいくつも残っている。
 満足させたはずの欲情が、まだまだ足りないというように沸きあがってくる。

 ――浴衣、おそるべし。

 ゴクリと唾を飲むが、いくらなんでも眠っている状態を襲うのは……と、自分を叱咤する。
 もしウリセスがこの場にいたら、間違いなく『ケダモノ』と冷たく言うだろう。
 無意識に伸びそうになった手を寸前で引っ込め、急いで布団をかけて自分も隣りで横になる。
 エメリナを見たら誘惑に負けてしまいそうで、背中を向けて目を瞑ったが……。

「ふぁ……せんせ……」

 寝惚け声と共に、ピトリとエメリナが背中にくっついてきた。どうやら身体が冷えてしまい、寒かったようだ。
 すぅすぅ寝息を立てながら、手足をらするりと絡みつかせる。

(……こ、こらぁっ!!)

 大好物を前に、お預けを喰らっている気分だ。
 退魔士の部隊やオーク、好戦的な同族よりも、この助手はタチが悪いかもしれない。

 理性と本能の狭間で苦悩し、ギルベルトは結局、一睡も出来ぬまま朝を迎える羽目になった。


 終



大陸各地の小さな話の最初へ 大陸各地の小さな話 59 大陸各地の小さな話 61 大陸各地の小さな話の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前