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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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彼の名は-9

「文屋、お前憶測だけでそういうこと言うのやめろよ」


さすがに言い過ぎだと思ったのか、大久保さんがたしなめる。


「だって、アイツここに異動になって長いくせに、女がいるって話聞いたことねえもん。

ゲイじゃないとしたら絶対童貞だよ、あんな暗い奴」


「いや、お前だってずっと彼女いないだろ?

どっちかっていうとお前の方がよっぽど童貞くさいぞ、この童貞顔が」


大久保さんは左手でジョッキをグイッと飲んでからそう言った。


大久保さんの言葉に思わず噴き出してしまう。


そんな彼の左手の薬指には彼女とお揃いだというペアリングがキラリ。


すると文屋さんは顔を真っ赤にして、


「ち、違うぞおい!

今は久留米の話だろ?
あいつだってゲイ顔してんじゃん!

ああいう精悍な顔つきの奴って新宿二丁目行けばすごいモテるらしいんだってさ。

あいつの浮いた話なんて聞いたことがないし、童貞じゃなくてもゲイ確定!

久留米圭介じゃなく久留米“ゲイ”介な」


とまくし立て、さらには自分が上手いことを言ったと思ったのか、上機嫌で笑いだした。


ああ、もう無理だコイツ。


私はそんな文屋さんにすっかり苛立ってしまい、とにかくコイツから離れようと決めると、スクッと立ち上がってお座敷を出て行った。



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